西武HDの「外資にホテル売却」が、“残念なニュース”でない理由:スピン経済の歩き方(3/6 ページ)
西武HDが、プリンスホテルなど30施設をシンガポールの政府系ファンドへ売却するという報道があった。これを受けて、ネットやSNSではネガティブな反応を示す人が多いが、本当に“残念なニュース”なのか。筆者の窪田氏は、逆の見方をしていて……。
星野リゾートは「運営」に特化
という話をすると決まって、「日本には日本のやり方がある!」とか「ホテルをしっかりと所有することで経営が安定して雇用も守れるのだ」とかなんとか言って、日本式経営を正当化したがる人たちがいるが、この日本においても、ホテルの「所有」と「運営」をしっかりと切り離したほうが、ホテルのサービスや施設の質が上がって成長に結びつくことは、ある「ホテル運営企業」が証明している。
もうお分かりだろう、星野リゾートだ。
ご存じのように、コロナ禍で観光業界が大打撃を受ける中で、星野リゾートが運営する主要ホテルは「1人勝ち」と揶揄(やゆ)されるほど、高い稼働率をキープした。20年7月時点で80%以上に戻り、3度目の緊急事態宣言が発出されるまで90%台を保ち続けた。
星野リゾートは、経営破綻した老舗旅館やリゾートなどの再生に次々と乗り出すが、そこでかつて「西武王国」がやったように、土地や建物を次々と丸抱えしていくなんてことはしない。あくまで「運営」に特化している。
そのためよく「ホテルの所有と運営を分離したことが、星野リゾートの強みだ」とか言われるが、これは何も星野リゾートが発明したものではなく、世界で40年前からやっていた当たり前の手法で、そこに頑なに背を向けてきたことが、日本のホテル業界の苦境につながっている部分もある。
このあたりは星野リゾート代表の星野佳路氏も指摘していて、日本に外資系ホテル運営会社がどんどん進出してきている背景について、このような分析をされている。
『ホテル運営会社の誕生は、ホテルを運営せず所有できるという時代の到来を意味し、これはホテル産業への投資が進むきっかけになったのです。所有はそれを専門とする投資家に任せ、ホテル会社は運営に特化するというパートナーシップは、ホテル経営の生産性を格段に高め、過去40年間、産業の成長を実現してきました。しかし日本では、土地や建物を所有しながら運営も手掛ける事業形態がその後も長く主流であり、その結果として近年、外資系ホテル運営会社が次々と日本に進出してくるチャンスをつくってしまったと考えています』(ダイヤモンドオンライン 2021年5月20日)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
「男女混合フロア」のあるカプセルホテルが、稼働率90%の理由
渋谷駅から徒歩5分ほどのところに、ちょっと変わったカプセルホテルが誕生した。その名は「The Millennials Shibuya」。カプセルホテルといえば安全性などを理由に、男女別フロアを設けるところが多いが、ここは違う。あえて「男女混合フロア」を取り入れているのだ。その狙いは……。
なぜ某カフェチェーンは時給を上げないのか 「安いニッポン」の根本的な原因
アルバイトの応募が少ない――。某カフェチェーンから、このような嘆きの声が聞こえてきた。人口減少の問題もあるだろうが、なぜバイトが集まらないのか。その理由は……。
「日本のアニメ」は家電や邦画と同じ道を歩んでしまうのか
技術や品質が「下」だとみくびっていた相手に、いつの間にか追い抜かれてしまう。そんな悪夢がやって来るのだろうか。白物家電や邦画が追い抜かれたように、「日本のアニメ産業」も負ける日がやって来て……。
「世界一勤勉」なのに、なぜ日本人の給与は低いのか
OECDの調査によると、日本人の平均年収は韓国人よりも低いという。なぜ日本人の給与は低いのか。筆者の窪田氏は「勤勉さと真面目さ」に原因があるのではないかとみている。どういう意味かというと……。
なぜ「プリウス」はボコボコに叩かれるのか 「暴走老人」のアイコンになる日
またしても、「暴走老人」による犠牲者が出てしまった。二度とこのような悲劇が起きないことを願うばかりだが、筆者の窪田氏は違うことに注目している。「プリウスバッシング」だ。どういう意味かというと……。
「70歳まで会社にしがみつく人」が結局、会社を弱体化させてしまうワケ
定年を引き上げるニュースが相次いでる。現行の60歳から65歳にする企業が増えてきているわけだが、筆者の窪田氏はこの動きに懸念を抱いている。「長く働くことができていいじゃないか」と思われたかもしれないが……。
