仮想通貨の課税は、なぜ最高55%の雑所得なのか?:金融ディスラプション(2/2 ページ)
仮想通貨(暗号資産)は税金が厳しい投資先として知られる。株式やFXなどが、利益の20.315%の一率課税なのに対し、仮想通貨は給与所得などと合算され最高税率は55%にも達する。なぜこのような税率なのか。そして税制が変わる可能性はないのか。
なぜ仮想通貨の税制は変わらないのか
では、なぜ仮想通貨の税制は変わらないのか。業界団体が同様の働きかけを行ったのは、今回が初めてではない。コインチェックの大規模流出事件などもあり、18年、19年、20年は、働きかけをしても門前払いに近い状態だった。しかし、だんだん情勢も変わってきた。
「今年はどんなものを出しますか? と聞いてくれたのが21年。否定的ではなくなってきている」(斎藤氏)
確かに18年当時の仮想通貨取引は、利用者保護などの観点で推奨できる投資商品ではなかったかもしれない。しかし、流出事件に前後しての法改正で仮想通貨は金融商品として定義され、取引所も他の金融機関同様の厳しい規制が敷かれた。一般的な投資商品となってきたわけだ。
「実質、暗号資産は金融商品と同等の位置づけとされている。投機的という指摘もあったが、レバレッジ比率も2倍と、他の金融商品よりも低くなった。規制も金融商品と同じだ。しかし税制だけ蚊帳の外にある」(斎藤氏)
実は総合課税の雑所得から始まり、時間をかけて申告分離に変わった商品としてはFXが有名だ。FXは1998年に解禁され、サービスがスタート。その後、悪徳業者を排除するための取引所登録の開始や、脱税を防ぐための支払調書制度の開始などを経て、申告分離課税に統一されたのが2012年だ。実に14年の時間がかかった。これは、FXが一般に普及し、国民に受け入れられたことが理由の一端だとされている。
「暗号資産も、FXと似た流れだと思っている。暗号資産そのものが、国民に受け入れられる資産になれば、それが分離課税のタイミングではないか」(斎藤氏)
ただし、何をもって「国民に受け入れられる」とするかは難しい。仮想通貨取引所の口座数は432万口座まで増加しており、これは分離課税が実現したときのFX口座数約390万口座を上回っている。単純な利用者数の問題ではないというのが、当局の認識なのだろう。
仮想通貨の分離課税化は、当局の検討リスト自体には載っているらしい。ただ、その位置は下の方だ。積極的に分離課税化を主張していた藤巻健史元参議院議員がいなくなってからは、積極的にサポートする国会議員も見当たらない。
仮想通貨税制はイノベーションを阻害
こうした状況の中、何が分離課税実現のポイントなのかも含めて、手探りで働きかけを行っているのがJCBAの状況だ。ただし、「機運が少しずつ醸成されてきている」と斎藤氏は見る。
それは国民への普及とはまた別の、イノベーション観点だ。JCBAが行った1万人へのアンケートでは、日本の税率が、技術普及や技術革新の妨げだと考えている投資家が95%を超えた。
海外では米国を筆頭に仮想通貨が受け入れられた結果、Web3など、トークンを生かしたエコノミーが生まれつつある。一方で、日本の税制や規制ではビジネスができないと、日本のトークンプロジェクトの海外流出も相次いでいる。ブロックチェーン関連のイノベーションに「日本だけ取り残される」という観点から、一部の議員の間では問題意識が高まっている模様だ。
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