押し寄せる「執行役員」削減の波 裏側に「3つの課題」:連載・2021年、役員改革が始まった(1/5 ページ)
執行役員とはいったい何なのか──。明確に定義している企業は少なく、基準や線引きが曖昧になっているケースも珍しくありません。執行役員を廃止・削減する企業も出てきています。
連載第2回、第3回では取締役会や社外取締役に焦点を当ててきました。一方、役員という場合、企業に所属する方であれば、日々の接点の多さからして、社外を含めた取締役よりも、社内の執行役員をイメージすることのほうが多いのではないでしょうか。
多くの企業は、各社の公式サイトに役員一覧を掲載しており、取締役と執行役員が開示されています。日本監査役協会の調査によると、執行役員制度は2021年時点で、上場企業の70%超で導入されています。
では、執行役員とはいったい何なのか──。
筆者自身、プロジェクトを通して、日常的に執行役員の方々に接している身でありながら、この問いに答えるのは意外に難しいというのが実感です。その要因として、取締役や取締役会とは異なり、執行役員は会社法における規定がないことが挙げられます。
一般的に、業務執行の責任者として位置付けられていることが多いですが、設定自体はそれぞれの企業の判断に委ねられています。従って、その定義や範囲は各社各様というのが実情です。実態として執行役員を明確に定義している企業は少なく、基準や線引きが曖昧になっているケースも珍しくありません。
実際の企業で見られる例として、事業部長や部長があるタイミングで執行役員に昇格したものの、その前後で役割に大きな変化がないことがあります。また、管掌する範囲は同じまま、常務執行役員から専務執行役員に昇格する場合もあります。「特筆すべき実績を残したなどの結果である」とも推察されるため、それだけで否定されるものではありません。
しかし、大多数の企業で執行役員に昇格することで処遇制度が変わり、それに伴って報酬水準が引き上がることも事実です。役割に変化が見られないのに、執行役員となっている事例を見かけるたびに、あらためて「執行役員とは何か」という疑問が湧きます。
なぜ、執行役員制度が生まれたのか
そもそも、執行役員制度が生まれた経緯や背景は何でしょうか。
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