デジタル時代にSTPは古いのか? 「リーンスタートアップ」の本質:確かに変わった「スピード感」(3/4 ページ)
現代マーケティングの大家、フィリップ・コトラーが提唱した「STP理論」。ターゲットに自社の価値・魅力を示して、競合と差別化を図るポジショニングのことだが、近頃「もう古い」と聞くことが多くなってきた。本当にそうなのだろうか?
STPはもう古い?
「リーン・スタートアップの時代」になったので、ガチガチにターゲットや、そのターゲットが感じる価値・魅力を固めてから製品開発を行う「STP理論」はもう古いという論調をしばしば耳にするようになった。
しかし、それは「リーン・スタートアップ」も「STP理論」も、どちらの本質も理解していない妄言であると言えよう。
そもそも、マーケティングの実務上の最大のポイントは、10・11項で述べた「戻って考え直す」である。
また、「マーケティングは流れで読み解く」であるが、その「全体像」の心臓部はSTPであると述べた。そこはリーン・スタートアップにおける「(1)構築」段階でも考える部分であるはずだ。
当てずっぽうに顧客とそれに対する価値の仮説を立て、ざっくりサービスを開発し、例えばWeb上にアップしたとしても、「誰が・どんな価値や魅力」を感じて来訪し、使って見てくれるというのか。それでは観察。計測もできない。
また、観察・計測の結果、「反応のよかった顧客候補」が、どんな人々なのかという結論を出すには、何らかの共通項を見いだす視点がいる。それのは「セグメンテーション」の正しい認識、「セグメンテーションはニーズで括る」を知っていなければ、「反応のよいのは20代女性!」などという結論を出してしまう。
「いやいや、最近はAIが判断してくれるから」という意見もあるだろう。確かに、数多くの反応があり、膨大なデータから共通項を見つける「作業」はやってくれるだろう。しかし、AIに初期のインプット、「学習」させるのは誰か。
そもそも、リーン・スタートアップの「「設計→開発→テスト→改善」というサイクルは、「(1)戦略立案(STP)→(2)製品(少量生産の試作品)開発→(3)グループインタビューでの評価収集、あるいはテスト販売データ収集→(4)結果分析と検証結果から「戻って考え直す」……と、リーン・スタートアップなどという言葉が登場する前から、マーケティングの現場では粛々と行なわれてきたことである。
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