「副業」が課長になる条件!? 有望な人材は「外に出る」時代により高く羽ばたく:人材流出のリスクは?(4/4 ページ)
日本経済新聞が某大企業の人事政策を報じた。課長になる条件として、出向や副業といった外部の経験を必須とするという。こうした時代にビジネスパーソンはどう生き抜くのか。
あなたを採用したら何か「いいこと」ありますか?
実は私自身も4回の転職を経験している。バブル時代に社会人になり、終身雇用を前提と考えていた世代なので、4回の転職は同年代の中では多い方かもしれない。我が社の若者のしっかりしたキャリアプランに比べると恥ずかしい限りであるが、最初の転職を「勢い」でしてしまい、その後リーマンショックに翻弄されて短期間で2回の転職を経験するというジェットコースター人生を送っている。しかしさまざまな人のご縁に支えられ、何とかサバイバルして今日に至っている。
私自身の経験からいえることであるが、転職を試みて採用されるかどうかは、「私を雇ったらこんなにいいことがありますよ」というストーリーを、ある程度の確度を持って語れるかどうかにかかっている。求人数に対して応募者の方が多いのが常であろうから、その中で突出する必要がある訳だ。先に「我が社の若者がキャリア実現に向けてスキルを磨き」と書いたが、要は自分が提供できるメニューの幅を広げるということである。それは業務に関する一歩進んだ知識かもしれないし、広範な顧客ベースかもしれない。はたまたデータアナリシスのスキル、業界を問わない幅広い人脈などメニューは多岐にわたる。自分の特性や興味の方向に合わせ、自分をどのようにデザインしていくか考えるのは重要である。副業はまさにそれを可能にする一つのツールであり、世の中的に副業が解禁になる動きは歓迎すべきことであろう。
「アニキ」を持つ大切さ
「人脈」と書いたが、ネットワークを広げることの大切さに異論を唱えるビジネスパーソンはいないと思う。人脈形成を目指して、異業種交流会を始めとするさまざまな勉強会に出ている人も多いだろう。そのような活動を通して、是非自分にとってのメンター的な存在を見つけたら良いと思う。以下ではそのような人を総称して「アニキ」と呼ばせていただく。アニキとはいうものの女性かもしれないし、年下であっても構わない。私のアニキの定義は、「自分の専門とは異なる領域での造詣が深く、自分が知らない世界やそこの住人を紹介してくれる人」である。要は自分の経験の幅を広げてくれるありがたい友人ということだ。
実は私には、某会社の社長をされていて大変親しくさせていただいているアニキがいる。この方は社業の傍ら、本を何冊も出しているのであるが、私がコラムの執筆をするようになったのは、このアニキが出版社を紹介してくださったことに起因する。一介のビジネスパーソンにすぎない私が、世の中に何かを発信することなど想像もしていなかった。しかし、この方の「やってみなはれ」の一言で人生に新しい経験の領域が誕生した。そしてあろうことか、これまでに本を4冊上梓し、今5冊目のオファーもいただいている。アニキなしでは決して入ることが叶わなかった世界であり大変感謝している。
世の中の不確実性はますます大きくなり、日本人の所得は一向に増えない状況が続いている。これまで「失われた30年」を送ってきたが、足元のコロナ禍もあり、政府・日銀・企業経営者の政策次第では順調に「40年」を迎えてしまうだろう。そんな中、本業であれ副業であれ、自分自身が世の中に提供できることを増やし、プロアクティブに生きていきたいものである。アニキのお世話になりつつ、いつかは自分も誰かのアニキになって恩返しをする。そんな付加価値の連鎖で、不確実な時代にこそ豊かな人生を送りたいと思う。
著者プロフィール
桂木麻也
インベストメント・バンカー。メガバンク、外資系証券会社、国内最大手投資銀行等を経て、現在は大手会計会社系アドバイザリーファームに勤務する。ASEANでの7年に及ぶ駐在経験から、クロスボーダーM&A及び、ASEAN財閥の動向について造詣が深い。慶應義塾大学経済学部卒、カリフォルニア大学ハーススクールオブビジネスMBA保有。
著書に『ASEAN企業地図 第2版』や『図解でわかるM&A入門』(いずれも翔泳社)がある。
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