「副業」が課長になる条件!? 有望な人材は「外に出る」時代により高く羽ばたく:人材流出のリスクは?(3/4 ページ)
日本経済新聞が某大企業の人事政策を報じた。課長になる条件として、出向や副業といった外部の経験を必須とするという。こうした時代にビジネスパーソンはどう生き抜くのか。
転職時代に増す人事部の重要性
優秀な人が転職してしまうのは、企業にすれば頭の痛い事態だ。だからといってそんな人を「裏切り者」呼ばわりして溜飲(りゅういん)を下げたり、慰留した挙句(あげく)に懲罰的に閑職に配置したりしても誰のプラスにもならない。優秀な人のキャリアパスとして選択されなかった理由は何かを分析しつつ、その人に匹敵する人材を中途採用して先に進むだけだ。
先述の通りDXが進行する現在の事業環境下では、自社内のノウハウだけで新しいものを創造していくことが難しい。その意味で、従業員に外の世界を経験させるのと、外の世界から新たな血を入れることに異同はない。既に終身雇用が前提になっていないのであるから、「生え抜き」の教育に固執する必要もないのである。しかし、退職者が出て次の人材の補充まで時間がかかるようでは、業務に支障が出てしまう。事業遂行に必要な人材のスペックを常にモニターし、そのような人材がマーケットのどこに存在しているかをきちんと把握することは、従業員の転職が所与になった時代の人事部の重要な任務なのである。
ちなみに私の所属している会社は、新卒を採用していない。つまり、転職者のみで構成されている会社である。「新入社員」の前職での勤続年数は3〜10年というところか。M&Aのアドバイザリー会社なので、前職で何らかの形でM&A業務に関与し、そのスキル習得を目指す人達が入社してくる。そして3〜7年ほどの修行の後に半数以上の人が「巣立って」行く。転職先は事業会社のM&A企画部門や投資ファンドなどで、競合のアドバイザリー会社に行く人もいる。そして出色なのは、巣立った先で実績を積んで出戻る人もいることだ。他社の経験と個人の成功体験の両方を持ち込んでくれるので、貴重な人材と位置付けられる。そして、役員候補として迎え入れることもある。
私の会社に入社してくる若い人達と話をしていて感心するのは、自分の10年ごとのキャリアの明確なイメージを持っており、その実現に向けてスキルを磨き、転職のタイミングを図っていることだ。転職を重ねていくことを前提にしているので、転職のエージェントとは常時コミュニケーションを取って情報収集をしている。そしていいご縁があれば、躊躇(ちゅうちょ)なく転職してキャリア(所得)を伸ばしている。プロジェクトの繁忙期に退職者が相次ぐと困ることもあるが、会社はその対策のために常時採用活動をしている。退職者が出るのは寂しいことではあるが、その人の転出先と関係が持ててビジネスに発展するかもしれないし、将来また出戻ってくれるかもしれない。そんな期待をこめて、退職者の最終日には夕礼をして門出を祝う伝統が我が社にはある。
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