なぜ「時速5キロの乗り物」をつくったのか 動かしてみて、分かってきたこと:「実証実験」の結果(1/4 ページ)
時速5キロで走行する乗り物「iino(イイノ)」をご存じだろうか。関西電力100%子会社の「ゲキダンイイノ」が開発したところ、全国各地を「のろのろ」と動いているのだ。2月、神戸市の三宮で実証実験を行ったところ、どんなことが分かってきたのだろうか。
だーるまさんがこーろんだ。
鬼が振り返ると、鬼以外の人はその場で静止しなければいけない遊びである。「小学生のころよく遊んだなあ」「ウチの地域では『坊さんが屁をこいた』と言っていたよ。で、それがなにか?」と思われたかもしれないが、鬼のように振り返っても「あれ? 動いたかな?」「ちょっと移動したかも」などと感じられるモビリティがある。関西電力100%子会社の「ゲキダンイイノ」(大阪市)が開発した「iino(イイノ)」だ。
聞いたことも見たこともない人も多いかもしれないが、このモビリティの特徴は、なんと言っても「のろのろ走行」である。ルートを設定して、車体に取り付けられた自動運転システム「LiDAR(ライダー)」が障害物を検知しながら、時速5キロで進むのだ。
ちなみに、人が歩く速度はどのくらいなのか。不動産屋の広告で「マンション駅近、徒歩5分」といった広告を目にすることがあるが、この「徒歩5分」は分速80メートルで計算されている。ということは、時速4.8キロの計算になるので、「iino」のスピードは人間が歩く速さとほぼ同じということになる。
「iino」の開発は2018年にスタートしていて、実はこれまでにさまざまな“結果”を残している。例えば、19年3月。大阪城公園で、昼は「動く茶室」として、夜は「移動式の日本酒バー」として、お茶や日本酒などを振る舞いながら、公園内を自動走行したのだ。
このほかにも、宇都宮市の採石場跡地や農場などを食事付きで走行したり、大阪の北船場でバルの店舗を回遊したり、会津で1日1人の旅を提供したり。全国を「のろのろ」動いてきたわけだが、スピードや効率が求められている時代に、なぜ逆行するような乗り物を開発したのだろうか。
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