「ドンキ」展開のPPIHが絶好調 トイレットペーパーの“110円差”から見えた知られざる「実力」:小売業の潮流は?(3/3 ページ)
ドン・キホーテを展開するPPIHが、コロナ禍でも過去最高の業績を達成している。筆者は緻密な戦略とチャレンジの結果だと分析する。どういうことかというと……。
小売業における5つの潮流とは?
1商品ずつの価格の強さだけではなく、価格の幅にも着目すべき点があります。調査をしたドン・キホーテの店舗では、フライパンは550〜4378円まで品ぞろえされていたのに対し、近隣の競合店は1408〜2780円でした。歯ブラシにおいては、110円の安価な商品から1万978円の電動歯ブラシまで取りそろえています。ディスカウントだけが強みなのではなく、品ぞろえの幅と大量の商品を圧縮陳列して発見する楽しさを提供していることも、同社の大きな特徴です。
さて、小売業における今後の潮流はどのようになるのでしょうか。下記のように、5つ示したいと思います。
【従来の展開】
(1)成長の軸:出店ありきの成長
(2)基本方針:全国一律のチェーンストアオペレーション
(3)組織・権限:本社主導
(4)テクノロジー:オムニチャネル・O2O(オーツーオー)
(5)店舗の役割:売る場所
【今後の潮流】
(1)成長の軸:M&A、小売業+α収益
(2)基本方針:個店対応力を最大化
(3)組織・権限:店舗主導、本社は後方支援
(4)テクノロジー:OMO(オーエムオー)、Web3.0の時代へ
(5)店舗の役割:発見・体験・データ取得、物流の起点
これらのポイントを、PPIHは綿密にかつ先行的に取り組んでいます。同社の普遍的な理念と、消費の変化に柔軟に対応する取り組みの両立に、今後も注目が集まります。
最後までお読みいただきありがとうございました。
著者プロフィール
佐久間俊一(さくま しゅんいち)
株式会社インサイト CMO 執行役員
著書に「小売業DX成功と失敗」(同文館出版)などがある。
グローバル総合コンサルファームであるKPMGコンサルティングにて小売企業を担当するセクターのディレクターとして大手小売企業の制度改革、マーケティングシステム構築などDX領域のコンサルティングを多数経験。世界三大戦略コンサルファームとも言われている、ベイン・アンド・カンパニーにおいて2020年より小売業・消費財メーカー担当メンバーとして大手小売企業の戦略構築支援及びコロナ後の市場総括を手掛ける。21年より総合広告会社インサイトのCMO(Chief Marketing Officer)執行役員に就任。
19年より1年半に渡って日経流通新聞にコーナーを持ち連載を担当するなど小売業には約20年間携わってきたことで高い専門性を有する。
日経MJフォーラム、KPMGフォーラムなど講演実績は累計100回。
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