「ドンキ」展開のPPIHが絶好調 トイレットペーパーの“110円差”から見えた知られざる「実力」:小売業の潮流は?(2/3 ページ)
ドン・キホーテを展開するPPIHが、コロナ禍でも過去最高の業績を達成している。筆者は緻密な戦略とチャレンジの結果だと分析する。どういうことかというと……。
個店対応をテクノロジーで加速させる
そして、個店対応力をさらにテクノロジーで加速させる取り組みが、19年に開始した「マシュマロ構想」です。同構想では、勘と経験に基づく値付けと、AIによって推奨された価格のどちらかを選択するか、各店舗に任せられています。その上で、綿密な検証と適切な評価をし、双方の長所をバランス良く浸透させていくプライシングモデルに着手しました。
同年には、子会社であるユニーの運営も本部主導のチェーンストア経営から、個店経営に切り替えました。店舗スタッフの売る力、売る気持ちを最大化することに注力したのです。
インバウンド需要の減少に大きく影響を受けているにもかかわらず、過去最高益を達成できたのはなぜでしょうか。コロナの巣ごもり需要が同社の業績を後押ししたのではなく、従来より深く取り組んできた個店経営こそが最大の要因だと私は捉えています。
安売り競争で消耗しない理由
同社の価格の強さについて少し触れたいと思います。次の表では、関東地方のとあるドン・キホーテ店舗で販売していた商品の価格と、周辺店舗・ECの価格を比較しています。アパレルの商品はユニクロと拮抗していますが、それ以外の商品に関しては圧倒的な価格力を誇っているのが分かります。
例えば、某カップラーメンはドン・キホーテで107円ですが、近隣の競合店では138円でした。この表を作成するにあたり、筆者は店舗を直接訪れて価格を記録し、ECで検索するという“アナログ”な手法を採用しました。こうした手法を、全商品、全店舗で行うことは物理的に不可能ですから、そこにテクノロジーを活用していく必要があります。
また、競合比較という観点だけではなく、自社の粗利がどれくらい確保されるのかも同時に考慮しなくては、単なる消耗戦になりかねません。トイレットペーパーを例にしましょう。筆者が訪れた関東の店舗では218円のものが、北海道にある店舗では328円でした。これは、各店舗の競合環境やタイミングに応じて、価格優位性によって集客商品として勝負をかける選別をしているように見受けられます。
このように店舗に権限委譲をし、本社は店舗が適切な判断ができるようなシステムや商品別粗利算出ができる会計の在り方を構築しなくてはなりません。値引きにはリスクが伴いますから、粗利の観点を見誤ると結果として収益が下がることにもなりかねず、これを回避する仕組みが大前提なのです。PPIHはそのお手本のような企業といえます。
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