トヨタがEVメーカーになることを待望するヒトに欠けている視点と残念な思想:高根英幸 「クルマのミライ」(3/4 ページ)
トヨタのバッテリーEV戦略に関する説明会では、トヨタの底力を見せたのは間違いない。しかし、あれを見て「トヨタもBEVに注力するのか」と思った人は多かったようだ。そう思わせるのが目的だとはいえ、この見方はあまりにも単純すぎる。
現在のBEVは決して割高なクルマではない
BEVはリセールの低さが気になる、という人も多い。確かに現在の中古BEV市場を見れば、ガソリン車と比べてリセールバリューが低い印象は否めない。だがそれは、実際の価値低下だけでなく、そうしてリセールの低さから敬遠しているユーザーがさらに需要を減らすことにより、価格を低下させていることも影響している。
現在、中古車市場で激安価格となっているEVは、日産リーフと三菱アイミーブの2車種くらいだ。一時はe-NV200もかなり安い価格で販売されていたが、生産終了の影響もあるのか低価格な個体は姿を消し、タマ数は極端に少なくなっている。
初代日産リーフとアイミーブの中古車が安いのは、バッテリーの劣化が著しいからで、それはバッテリーのマネージメントシステム、とりわけ温度管理システムが不十分であることが大きな原因だ。バッテリーの温度を積極的にコントロールできる冷却システムを持たない構造で急速充電を繰り返すと、発熱によりバッテリーセルにダメージが残る。
マツダMX-30 EVモデルのバッテリーパックに採用された冷却システム。バッテリーモジュールが内部のセルから熱伝導されて、エアコン冷媒により冷やされたヒートシンクと熱交換することにより冷却を行なう。液冷式では極寒地での使用時にはバッテリーを温める機能をもつBEVも存在する
そんな経験から、最近のBEVはバッテリーの冷却システムが重要視されている。そのためバッテリーの劣化をかなり抑え込めるため、今後、中古車のリセールバリューは高まっていくことは確実だ。
そもそもBEVの場合、車両価格の3、4割はバッテリーコストだ。3〜4年経過したバッテリーにはそれほど金銭的な価値はないと判断することもできるから、ガソリン車と同じ感覚で車両価格からのリセールバリューを求めるのは間違いなのである。バッテリーの価値が消失した部分は、燃料代に比べて格安な電気代によってすでに回収できていると考えるべきなのだ。
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