東京オリパラに関する総括はどうした:何を検証すべきか(1/5 ページ)
昨夏のコロナ過の最中に行われ、議論を呼んだ東京オリンピック・パラリンピック。その招致時に企図された狙いの大半はコロナ過もあり脆くも崩れ去ったため、費用対効果の面では見るも無残な結果となった。それも含め、ごまかさずにきちんと総括すべきだ。
日沖博道氏のプロフィール:
パスファインダーズ社長。30年にわたる戦略・業務コンサルティングの経験と実績を基に、新規事業・新市場進出を中心とした戦略策定と、「空回りしない」業務改革を支援。日本ユニシス、アーサー・D・リトル等出身。一橋大学経済学部、テキサス大学オースティン校経営大学院卒。
北京オリンピックが終了し、メダル獲得数が冬季史上最高だとかで世間は盛り上がっている。しかし忘れてはならない、昨年の夏に行われた東京オリンピック・パラリンピックの総括がまだきちんとされていないことを。国民・都民(法人を含む)の多額の血税が投入されたからには、(両大会の組織委員会、東京都、内閣と文科省の其々の)責任者は、計画に比べ実績がどうだったのかをきちんと検証して、国民・都民に対し明確に報告する義務がある。
じゃあ何をどう検証するべきなのか。
企業の場合であれば、シンプルに「費用対効果」の軸で計画(予算)に対し実績を対比すればよい。すなわち計画時の費用に対しどう増減したか、効果として設定したKPI=成果指標(およびKGI=最終成果指標。通常は売上や利益およびキャッシュフロー)で見てどうだったのか、をそれぞれ整理した上で、費用対効果を測るKGI(通常はNPV:正味現在価値およびIRR:内部利益率)の計画vs実績で評価すればよい。
しかし行政が主導した東京オリパラに関しては少し複雑だ。というのは、効果をどういう軸で測るべきかが予め明示されていないからだ(これは政治家と官僚がいざ失敗というときの逃げ道を作っていたからだ)。しかも新型コロナの世界的なパンデミック下での開催という、計画時には誰もが予想しなかった特殊要因のせいで、様々な追加対策が当然ながら費用を増やした半面、効果の多くが吹っ飛んでしまったことは明らかだからだ。
とはいえ、東京オリパラの招致計画の狙いは客観的には6つ程度に集約されたはずだ。すなわち、1)国民が日本や海外の一流選手のパフォーマンスを間近に観ることでのスポーツ関心度の向上(とその後のスポーツ人口の増加)、2)オリンピック・パラリンピックという世界的祝祭イベントが身近で開催されて日本選手の活躍に盛り上がって景気が刺激されるイベント効果、3)海外からの選手・関係者・観光客との日本国民の国際交流体験、4)外国人観光客の訪日による直接的経済効果とその後のインバウンド観光への貢献、5)会場施設などを含むインフラ整備によるその後の資産化、6)日本企業の技術を世界にアピールすることでのショーウィンドゥ効果、といったところだろう。
しかしこのうち政府が一番期待していたであろう4)の「インバウンド観光への貢献」と6)の「ショーウィンドゥ効果」は、コロナ過で外国人観光客が来なかった上に外国人メディア関係者の行動を制限したために大半が吹き飛んでしまったし、3)の国際交流もほとんど吹き飛んでしまった。
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