イオンの「最低賃金以下」問題から見える、“安いニッポン”の無限ループ:スピン経済の歩き方(7/7 ページ)
イオン九州が、パート従業員を最低賃金よりも低い時給で募集していることが明らかになった。とはいっても、これは単純なミス。システムの更新がきちんとできていなかったので、過去の“安い時給”が表示されていたわけだが、筆者の窪田氏は「見過ごせない出来事」だと指摘している。どういうことかというと……。
「賃上げ」に挑戦すべき
企業からすれば、「世界屈指の安さに異常に執着する消費者」を相手に「値上げ」を宣言するなど、あまりに恐ろしくてできないというのはよく分かる。が、それを避け続けていたらいずれは、労働者の「血」だけでは済まず、企業本体まで大量の「血」を流さなくてはいけない。誰かがリスクをとって動かなければ、この「安さの無限地獄」からはいつまでも抜け出すことができないのだ。
その先陣を切ることができるのは、イオンのように日本の雇用を支えている巨大企業だけだ。同社は「お客様第一主義」を掲げる一方で、「絶えず革新を続ける企業集団」だと自認している。
「価格凍結」には一区切りつけていただき、これから日本経済の未来を見据えて非正規労働者の「賃上げ」という革新にもぜひチャレンジしていただきたい。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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