ドラえもんがつくった地下鉄は公共交通か? ローカル線問題を考える:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(1/6 ページ)
『ドラえもん』に「地下鉄を作っちゃえ」という話がある。のび太がパパのためにつくった地下鉄は公共交通と認められるか。この話をもとに、公共交通になるための過程、利用者減少から撤退への道のりを考えてみたい。
『ドラえもん』に「地下鉄を作っちゃえ」という話がある。単行本『てんとうむしコミックス』の第2巻に収録されている。アニオタWikiによると、初出は小学館の学年誌『小学1年生』の1973年12月号でタイトルは「ちかてつ」。67年生まれの私はまさに小学1年生だったから、リアルタイムで読んでいたようだ。強く印象に残っていた。
ざっくりと内容を紹介すると、のび太のパパは満員電車の通勤地獄に遭っている。のび太は気の毒に思い「パパに地下鉄をプレゼントしよう」と思い立つ。ドラえもんは無茶だというけれど、しぶしぶ小型重機「穴ほり機」を出した。家の敷地から掘り始めて会社へ。何日か掛けて完成し、レールも敷設され、2軸の小さな電車も用意された。パパに無期限の定期がプレゼントされて、家から会社まで5分で着く。もちろんパパは大喜びで乗り込む。
しかしマンガである。のび太の地下鉄は本物の地下鉄工事に遮(さえぎ)られた。やむなくルートを変更したけれど「穴ほり機」が壊れる。最後は手掘りで3人とも泥だらけ。それでもパパは、のび太の思いを受け止め感謝する。めでたしめでたし。
小学1年生の私は社会を知らない。のび太と同じく、この漫画でパパが大変な思いで会社に行っていると知った。ドラえもんは子どもに世の中を教えてくれるマンガだった。そして「ボク専用の地下鉄、いいな」と思った。今も思う(笑)。
この話をいま読むと「浅い地下を掘って地権はどうなる」とか「許認可」、「車両と線路はどんなひみつ道具で用意したか」や「維持費をどうするつもりだったか」などツッコミを入れたくなるけれど、まぁ、野暮な話である。
そもそも「どこでもドア」で行けばもっと簡単だ。ただし単行本2巻までに「どこでもドア」は出てこない。当時ドラえもんは「どこでもドア」を知っていたかもしれない。だけど「のび太くんは地下鉄をつくりたい」と言ったから、まずはその希望に合わせた。
ドラえもんのほとんどの話は「便利に解決する手段より、楽しく解決する手段」を選んでいるように思う。そのほうがマンガとして面白い。「便利に解決」も「楽しく解決」も鉄道の問題を考える上で気付きが多い。しかし、今回は「公共交通」を考えたい。
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