花王製品を締め出したオーケー 値上げ宣言は「生意気」なのか?:長浜淳之介のトレンドアンテナ(1/5 ページ)
ディスカウントストア「オーケーストア」が、花王の値上げに反発した。一部商品の取り扱いを中止する騒動に発展。花王は、食料品は値上げしているのに日用品はダメなのかと困惑している。
首都圏にディスカウントストア「オーケーストア」を131店(2021年9月現在)展開するオーケー(横浜市)は1月31日、花王の製品約500品目のうち約145品目に関して取り扱いを中止した。
花王製品の販売を担う花王グループカスタマーマーケティングより、仕入れ価格の値上げの申し出があったことに反発したものだ。オーケーとしては店頭販売価格を上げざるを得ず、同社の理念である「高品質・Everyday Low Price」に反するというものだ。
しかし、花王製品の主力を成す、生活雑貨、スキンケア・ヘアケア、化粧品などは、石油や食用にもなる植物油を原料とするものが多数含まれている。輸送に使うトラックのガソリン代も高騰している。
周知のように、コロナ禍で食用油、大豆、小麦、牛肉など食品の値上げが続いている。花王がケミカル事業でよく使うパーム油は、食用にもなる。主産地・東南アジアの天候不順、同じく食用油の原料となる大豆やトウモロコシの逼迫(ひっぱく)もあって、過去最高値の水準にまで高騰している。
ガソリンを始めとする石油製品の高騰も目立った現象だ。ガソリンの価格が上がっているのは、原油価格が過去に例を見ないほど上がっているためである。
ニューヨーク原油先物市場では、20年5月物で原油の供給過剰のため、史上初めて1バレルの価格がマイナスになるほど下落していた。しかし、その後高騰へと転じ、22年4月物では116ドル台(3月3日付)まで上がってきた。これは、08年以来、約13年半ぶりの高値で、もはや「第3次オイルショックだ」との声も上がり始めている。
ウクライナに侵攻したロシアは世界最大の天然ガス輸出国であり、ロシアへの経済制裁によって、石油市場はさらに逼迫している。原油高が長期化しそうな情勢だ。
花王はサプライチェーンマネジメントが強力なメーカーである。しかし、オイルショックにも匹敵する原料価格の高騰は、一企業の努力でどうなるものでもない。原材料と物流のコスト高は明らかで、製品の値上げはやむを得ない。
オーケーの「高品質・Everyday Low Price」の理念は尊いが、原料代、輸送代がどんなに上がっても、メーカーは利益を削って、従業員をリストラしてでも耐え忍べというのだろうか。
同業他社も、これほどまでのコスト高は耐えがたいが、花王のように値上げを表明すればいかに痛い目に遭うか。オーケーは同業他社にも値上げの流れが波及しないように、花王を懲らしめているようにも映る。
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