実はAIを使っている、長崎ちゃんぽん「リンガーハット」 予測精度が突如ダウン……どう立ち向かったのか?:発注量を自動調整(2/3 ページ)
店舗ごとの売り上げ予測に、AIを活用している長崎ちゃんぽん専門店「リンガーハット」。しかしコロナ禍で客足が鈍ったことで、予測の精度がぶれ始めた。どのように対処しようとしているのか。
その記事は、とある食品メーカーが、AIを使った商品の出荷予測を行うことで生産ラインの合理化を目指しているという内容だった。早速その食品メーカーを訪問して話を聞いたところ、興味深い取り組みだったため、AIモデルの開発を担当していたパロアルトインサイトを紹介してもらった。パロアルトインサイトは、シリコンバレー発のAIベンチャー企業だ。
リンガーハットはまず、社内にどのようなビジネス課題が潜んでいるのかを可視化するためにアンケート調査を実施することにした。その結果、業務現場から「物流に改善の余地がある」「アルバイトのシフト管理が困難」など、さまざまな課題が挙がったが、その多くは売り上げ予測の精度の問題に起因すると考えられた。
「コロナ禍以降、売り上げ予測の精度に課題があることはもともと分かっていましたが、現場の課題を解決する上でも、やはり予測精度を向上させないことには解決への糸口が見つかりそうにありませんでした。そこで、売り上げ予測AIモデルの改修に本格的に取り組むことになりました」(是末氏)
これまで開発・運用してきたAIモデルは、過去3年分の売り上げデータをAIに学習させてモデルを構築していた。今回の改修でも同じく過去3年分のデータを学習させるものの、それだけでなく直近4〜5日分の売り上げデータの変化がよりモデルに反映されるようチューニングを加えていった。
これにより従来のAIモデルでは難しかった、パンデミックや災害といった突発的な事態による需要の変化にも、比較的迅速に追随できるようになるという。さすがに「昨日起きた事象を明日の予測に反映させる」というのは難しいが、是末氏によれば「過去4〜5日間の変化のトレンドを基に、直近の予測値を修正することは理論的に可能だと聞いています」という。
AIモデルの改修を進めるにあたって、リンガーハット側は是末氏ともう1人の担当者の2人体制で臨んだ。まずリンガーハット側でビジネス要件を洗い出し、それを基にパロアルトインサイトにAIモデルの開発を依頼した。そうして出来上がったモデルを実際にいくつかの店舗で運用し、結果を評価した上でさらなるチューニングを重ねるというサイクルを回していった。
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