「なくす」と「変える」で考えてみる 総務から会社組織が生まれ変わるカギ:「総務」から会社を変える(3/3 ページ)
総務領域に詳しい豊田健一氏の連載。今回は、働き方の変化に伴う、総務の管理手法の変化を扱う。これまでの集中管理から分散管理へ移行するに伴い求められるのが自走組織への変化だが、その中で総務が意識すべきたった一つのポイントとは。
先に、自走組織とは、自律的に判断し仕事をする組織、そのように定義した。それを総務に置き換えると、誰から指示されるわけでもなく、自ら必要と思われることを実践していく組織、ということになる。この考えは、当連載で継続して重要性を発信してきた「戦略総務」そのものである。そもそも戦略総務とは「総務が自ら考え、自ら会社を変えること。そのために、まず、総務自身が変わること」であった。
一方で、悲しいかな現状の総務は、「指示されて動く組織」「何かいわれない限り変化しない組織」が多いように感じる。決められた通りに行う、ルールを徹底するという点はどんな組織においても必要である。しかし、変化の激しい現在において、何より自ら変化することが重要だ。会社の基盤を担う総務が変化しないで、会社全体が変化に適応できるだろうか。総務こそが自走組織となる重要性がここにあるのである。
しかし、いきなり総務という組織が自走組織となることは難しい。まずはそこで働くメンバーが自走していくことがスタート地点となる。決められたことを粛々と各人が行う、という意味での自走ではなく、環境適応の為にどのように変化するかを、各人が考え行動する、という意味での自走である。となると、必要なことは、シンプルに「考える」ことである。
環境がどのように変化しているかを見定める。その変化が、自社にとってどのような影響を与えるかをイメージする。向かい風となるのか、追い風となるのか。環境変化を見定めた後の対応は、前例がなく、もちろん過去に経験を持つメンバーも社内はおろか、社外にもいないケースもある。これまでの先例・事例頼りな総務では、対処できない時代になっている。残る方法は、自ら考える、組織として考える、それだけである。
「なくす」と「変える」
では、どのように訓練するか。まずは新たな事態に直面してから考えるのではなく、既存業務を題材に、考える訓練をしてはどうだろうか。新たな価値を生み出すのではなく、まずは既存の仕事をなくす、という発想で考えていく。
「そもそも、今ある社用車をなくしたら、現場はどうなるのか?」
「そもそも、本社をなくしたら、どうなるのか?」
「そもそも、私が行っているこの業務がなくなったら、どのような影響が社内にあるのだろうか?」
あるいは、既存業務の方法を抜本的に見直したらどうなるか。生み出すのではなく、なくすのでもなく、「変える」という切り口でも考え抜いてみる。
「そもそもなくしたら」という切り口で考えていくと、実は、その本質的な価値が見えてくるものであるし、「変える」という発想は改善そのものである。総務の自走組織とは、環境への適応もさることながら、常に改善し続けるという側面もある。常に変化していくのは、新たなものに限らない、既にあるものの成長も、一つの変化なのである。
会社としての未来予想図でもある自走組織は、総務にとっては既に未来ではなく、今、必要な姿でもあるのだ。
著者プロフィール・豊田健一(とよだけんいち)
株式会社月刊総務 代表取締役社長、戦略総務研究所 所長
早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社リクルート、株式会社魚力で総務課長などを経験。現在、日本で唯一の管理部門向け専門誌『月刊総務』を発行している株式会社月刊総務の代表取締役社長、戦略総務研究所 所長。一般社団法人ファシリティ・オフィスサービス・コンソーシアムの副代表理事や、All Aboutの「総務人事、社内コミュニケーション・ガイド」も務める。
著書に、『リモートワークありきの世界で経営の軸を作る 戦略総務 実践ハンドブック』(日本能率協会マネジメントセンター、以下同)、『マンガでやさしくわかる総務の仕事』、『経営を強くする戦略総務』
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