日本のホテル市場の回復は世界に遅れるのか 回復速度の違いが拡大:ニッセイ基礎研究所の分析(4/5 ページ)
世界ではホテル市場において徐々に明るい展望が見えてきているようだ。一方で、国内ブランドの業績は芳しくない。原因は何なのか?
5――2019年の居住地と同じ都道府県内への宿泊旅客数
では2021年は「(2)近距離旅行の増加」「(3)遠距離旅行の増加」のいずれの段階だろうか。
ここで、観光庁の宿泊旅行統計を用い、最も近距離な宿泊旅行を、目的地が旅客の居住する都道府県内の旅行と考えるとする。その旅客数が、同じ都道府県から全国への旅客数に占める割合が減少していれば、「(2)近距離旅行」の割合が減り、「(3)遠距離旅行」の段階に移行しているといえるだろう。
コロナ禍前の状況を確認してみると、2019年1月から11月に、居住する各都道府県から出発した宿泊旅客のうち、目的地が自身の居住する都道府県内である旅行客の割合は、全体では13.9%であった。また、都道府県別では上位から1位:宮城県(29.4%)、2位:茨城県(26.9%)、3位:岩手県(26.0%)、4位:山形県(25.2%)、5位:愛知県(25.2%)(図表4)となっていた。
また都市部の居住者については、他都道府県への宿泊も多い一方で、都市部を目的とする宿泊旅客も多いという双方性が認められた。例えば、首都圏の居住者は、国内観光客数全体の25.7%(2019年1-11月)を占める一方、首都圏を目的地としてそれ以外の道府県からやってくる国内観光客も34.3%おり、最も宿泊旅客の行き来が多いエリアとなっていた。
6――2020年の居住地と同じ都道府県内への宿泊旅客数
コロナ禍下では緊急事態宣言などにより都道府県境を越えた移動自粛が推奨され、2020年4月から11月では、目的地が居住する都道府県内である旅行客の割合は、全体では29.0%となり、近距離の宿泊旅客割合が2倍強に増加した。都道府県別では、1位:東京都(50.4%)、2位:北海道(47.3%)、3位:岩手県(45.2%)、4位:宮城県(43.7%)、5位:神奈川県(42.0%)(図表5)となった。
2019年1月から11月時点の割合と比べると、東京(+32.0%)、北海道(+23.2%)、大阪(+20.2%)、神奈川(+19.9%)、広島(+18.9%)、新潟(+18.1%)と、自身の居住する都道府県を目的地とする宿泊旅客の増加が著しい。
都市部については、目的地および出発地とする宿泊旅客のいずれも減少している。特に首都圏を目的地とする北海道・東北地方からが減少し、居住する県内を目的地とする宿泊旅客が増加している。
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