日本のホテル市場の回復は世界に遅れるのか 回復速度の違いが拡大:ニッセイ基礎研究所の分析(5/5 ページ)
世界ではホテル市場において徐々に明るい展望が見えてきているようだ。一方で、国内ブランドの業績は芳しくない。原因は何なのか?
7――2021年の居住地と同じ都道府県内への宿泊旅客数
2020年と2021年の4月から11月で比較すると、2021年で48都道府県中29道府県で居住する都道府県内を目的地とする宿泊旅客の割合が増加している。
全体でも、2021年1月から11月では、目的地が居住する都道府県内である宿泊旅客は29.5%となり、やや近距離の宿泊旅行が増加しているようだ。都道府県別のランキングでは、1位:北海道(51.3%)、2位:岩手県(49.5%)、3位:宮城県(45.1%)、4位:東京都(43.2%)、5位:秋田県(38.4%)となった(図表6)。
2021年4月から11月は2020年と比べると、目的地が居住する県内である宿泊旅客は鳥取県(+16.5%)、島根県(+12.6%)などでは増加しており、さらに自粛ムードが強まっているとみられる。一方、都市部である東京都(▲7.4%)、神奈川県(▲5.4%)では目的地が居住する都県である割合が減少した(図表7、8)。
宿泊旅客数も、居住する都道府県・地域内では回復の傾向が見られる。また、首都圏を目的地とする旅行は、全ての地域からの宿泊旅客数が改善している。ただし、他地域からの中国地方、北海道から九州地方、四国地方から東北地方、沖縄から四国地方などの遠距離は減少している。
回復の段階に当てはめると、2020年はGo Toトラベルキャンペーンなどの影響で「(3)遠距離旅行の増加」する場面もあったが、2021年は居住地都道府県内近隣にとどまるケースが多く、「(2)近距離旅行の増加」へやや戻り、回復が遠のいた年といえそうだ(図表9)。
8――今後は国別の回復速度の違いが鮮明に
国内でも観光業は経済成長を期待されている分野である。観光庁は2022年度の観光関係予算を前年度比1.35倍に上積みするなど、国も推進する方向であることはコロナ禍前とは変わらない。一方で、国内では移動自粛の風潮がいまだに強い。断続的なウイルス感染拡大により、遠距離旅行はしないという意識が定着しつつあるのかもしれない。
しかし、欧米では、各国政府が新型コロナウイルス感染をインフルエンザ等と同様に日常ととらえる向きに世論を着実に誘導しつつ、今後を見据え正常化に向けた行動を促すように政策転換をしているようだ。新型コロナウイルスをどう定義し、どのような国の施策を建てるかは、国ごとに異なると思われるが、今年は国毎のコロナ対策の違いによって、経済の回復速度の違いがさらに大きくなり、ホテル市場の回復にも相当な違いが出てくる年になるのではないだろうか。
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