クルマにあふれかえるスイッチ問題。最新メルセデスはどう対処した?: 鈴木ケンイチ「自動車市場を読み解く」(2/2 ページ)
機能が増加するたびに、それを操るためのスイッチが必要になります。数は多く、その理解と操作は煩雑で困難になる一方。そんな操作系の試行錯誤が続く中、「近頃、乗った中で、最も洗練されている」と感じたのがメルセデス・ベンツの最新モデル、「Cクラス」です。
ステアリングのもう一つ重要な特徴
しかし、このステアリングには、もう一つ重要な特徴があります。それは、「スイッチがたくさんある」こと。
ステアリングの真ん中にあるエアバッグは小さく、そこから左右に伸びるスポークに小さなボタンがぎっしりと並びます。そして、それらたくさんのボタンで、オーディオ操作、メーターの操作、運転支援システムの操作などが可能。さらに裏側にはシフトチェンジのためのパドルシフト。ハンドルの右側には、コラムシフトが生えており、左側にはウインカーとワイパーを操作するレバーがあります。ちなみに、「Cクラス」をはじめとする最新のメルセデス・ベンツのヘッドライトは、デフォルトで「オート」になっていて操作する必要がありません。
一方、運転手の左側、一般的なフロアシフトのある位置には、収納があるだけ。操作系がなにもありません。そして、センターコンソールには大きなディスプレイがあり、その下に小さなボタンが並びます。ボタンの内容は、真ん中にハザードランプのボタン、右側にオーディオのオン/オフとボリューム、左側にクルマの走行モードを変化させるボタンと、クルマの周囲を表示させるボタンというもの。ただし、オーディオ系はステアリングのボタンでも操作が可能です。また、エアコンの操作は、ディスプレイのタッチスクリーンで行います。
つまり、運転は、ハザードランプとエアコンの操作、ドライブモードの切り替え以外は、すべてハンドルから手を離さずに行えるようになっているのです。特に素晴らしいのは、左手で、フロアシフトノブのあたりをゴソゴソと探りながら操作する必要がないということ。また、運転手の目の前のメーターは、フラットで大きなモニター風で、多様な情報を、ドライバーの好みに合わせて表示できます。運転手が、前方から目を離す時間が短く、安全性という点では、これ以上ないほど優れているということです。
高機能でありながら、使いやすく、しかも安全性が高い。なんとも洗練された操作系だと感心してしまいました。メルセデス・ベンツは、優れたプレミアムカーとして世界中で認められ、高い評価を得ています。そうした高評価の源が、こうした一歩先行く提案を行うところにあるのは間違いありません。
筆者プロフィール:鈴木ケンイチ
1966年9月生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく“深く”説明することをモットーにする。
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