マツダ・ロードスターが玄人受けする理由 マイナーチェンジで大絶賛: 鈴木ケンイチ「自動車市場を読み解く」(1/2 ページ)
改良された「ロードスター」が、びっくりするほど好評です。試乗会を実施しました。そのレポートを見てみれば、どれもこれも好評、というか、ほぼ絶賛の嵐といった具合。いったい、そこにはどんな理由があるのでしょうか?
改良された「ロードスター」が、びっくりするほど好評です。
マツダは、2021年12月に「ロードスター」の商品改良を実施。それに合わせて2月上旬にはメディア向けの試乗会を実施しました。そのレポートを見てみれば、どれもこれも好評、というか、ほぼ絶賛の嵐といった具合。
さらにSNSに目を移せば、ディーラーの試乗車を体験した方からの数多くの好印象なコメントを見ることもできます。ここで特徴的だなと思うのは、「良いね」というコメントがモータージャーナリストや、長年、ロードスターに乗っているユーザーに多く見えること。つまり、「玄人」ほど、ロードスターの改良を高く評価しているのです。
いったい、そこにはどんな理由があるのでしょうか?
ちなみに筆者も、メディア向け試乗会に参加しました。また、個人的にも過去25年以上にわたってロードスターを愛車にしてきました。そうしたオーナー目線でいえば、今回の大絶賛の嵐の理由は、「ロードスターの魅力の本質を理解した改良であり、それをクルマやロードスターに詳しい人ほど、よく分かる」というものなのではないでしょうか。
ライト・ウェイト・スポーツカーとオープンカーの両立
まず、「ロードスターの魅力」とは何か。それは「廉価なLWS(ライト・ウェイト・スポーツ)のオープンカーを高いレベルで実現したこと」に尽きるでしょう。
LWS(ライト・ウェイト・スポーツカー)とは、名称の通りに、軽いスポーツカーです。軽いから加速も減速も楽で、コントロール性も良好。ただし、最高出力や最高速度、優れたラップタイム、つまり、「速さ」は二の次。「気持ちよく走れる」というのが魅力です。これにロードスターは「オープンカー」という魅力をプラス、さらに「廉価」まで与えています。
ところが、LWS(ライト・ウェイト・スポーツカー)とオープンカーの両立は、意外と難しい課題です。
もともと、オープンカーは重くなりがちです。現代のクルマは、モノコックボディという、薄い鉄板を箱型にすることでボディの剛性を作り出しています。箱型だから軽く硬いんですね。でも、オープンカーは屋根の部分がありません。上がないから、下側だけで剛性を確保しようとすると、補強で重くなります。例えば、クーペとオープンカーの両方がある日産の「フェアレディZ」は、オープンカーのほうが100キロほど重くなっています。共同開発されたトヨタ「スープラ」とBMW「Z4」は、オープンカーの「Z4」の方が、やはり150キロほども重くなっています。
その難題を、ロードスターは独自のボディ構造で解決しました。「PPF(パワー・プラント・フレーム)」というアルミの骨組みで、エンジン、トランスミッション、後輪のデフを一直線につなぎます。これで剛性を確保して、その分、車体を軽くすることができたのです。軽く高い剛性のボディがあるからこそ、ロードスターは、ダイレクトで軽快に走ることができるのです。
廉価で気持ちの良い走りをするロードスターは、日本だけでなく、世界中で大喝采を受けました。その後に登場したローバー「MGF」、BMW「Z3」、フィアット「バルケッタ」、メルセデス・ベンツ「CLK」、ホンダ「S2000」たちを置き去りにして、ロードスターは独走します。その結果、過去30年以上にわたるロードスターの長い歴史を生み出しました。
その30年以上もの歴史を積み重ねたことにより、ロードスターは研鑽を続け、さらなる高みを目指すことができました。これほど、長期間にわたって、1台を磨き続けることのできたスポーツカーは、ほんのわずかしかありません。ここに、今回、「玄人ほど高い評価を与えた」という理由があります。マツダは、じっくりと腰を据えて、30年以上かけてロードスターを改良し続けたのです。クオリティの高い製品ができるのも当然でしょう。
関連記事
- 新生日産が目指す道とは 電動化への“野望”を読み解く
日産は今、再生の道を歩んでいます。日産代表取締役会長カルロス・ゴーン氏が逮捕され、日産は、すべてが変わりました。その直後のコロナ禍を経て、4か年計画「NISSAN NEXT」を発表。さらに新たな長期ビジョン「Nissan Ambition 2030」を発表しました。 - 逆境のマツダ 大型FR導入で息を吹き返せるか?
今年、目の離せないメーカーがあります。それがマツダです。実のところ、コロナ禍でのマツダのビジネスは散々なものでした。しかし、歴史を振り返れば、マツダは、これまで何度も、もっと辛い状況を耐え、そして、そこから復活してきたメーカーでもあります。 - ソニーも参入 各社からEV出そろう2022年、消費者は本当にEVを選ぶ?
22年は、これまで以上に「EV」に注目の年となることは間違いありません。なぜなら、22年は市場に販売できるEVがそろう年になるからです。 - 2021年の自動車販売隠れトレンド、箱型&スライドドア 5年前のモデルがランキング上位に
今年は「ヤリス」の年だったと言えるでしょう。では、今年のトレンドは何だったのでしょうか? 表面的に見えるのはSUVです。とはいえ、実際に売れているクルマを並べてみると、また違ったトレンドが見えてきました。 - 今年一番売れたクルマは? ビッグヒットの裏にあるカラクリ
2021年がもうすぐ終わりになろうとしています。この原稿を手掛ける12月上旬では、まだ1年間の集計は出ていませんが、今年のベストセラーカーは、ぼぼ決まりでしょう。それは、トヨタの「ヤリス」です。しかし、今回のヤリスのビッグヒットには、あるカラクリがありました。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.