改正電帳法「2年の猶予」で企業の動きはどうなった? リアルな現状:業種により大きな差
2022年1月に施行された、改正電子帳簿保存法。「電子取引データの電子保存の義務化」は、2年間の猶予が設けられた。この猶予により、企業の動きはどう変化したのだろうか?
2022年1月に施行された、改正電子帳簿保存法。改正の重要なポイントである「電子取引データの電子保存の義務化」については、21年12月に急きょ、2年間の猶予が設けられることが決まった。この猶予により、企業の動きはどう変化したのだろうか?
帳票ベンダー大手のウイングアーク1stが22年2月に実施した調査によれば、電帳法の対応に向けて「すでに具体的に動いている」企業は32.8%にとどまる。「対応方法を検討している」企業が最も多く38.3%、「まだなにも動いていない」との回答も10.6%ある。
与えられた2年間の猶予をどう使う?
2年間の猶予を活用している企業は、62.1%だ。具体的には、「あらためて社内の棚卸を実施している」が35.1%、「サービスの導入を検討し始めている」が27.0%だった。
「すでにサービス導入が決定している」と答えた企業は11.1%、「特に影響はない」と回答した企業は14.2%。一方で、「猶予ができたので、いったん検討をやめた」と回答した企業も12.5%見られた。
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「業種」により対応に大きな差
改正電帳法への対応状況を業種別に見ると、「対応に向けてすでに具体的に動いている」と回答した比率が最も高かったのは情報サービス業(41.6%)だった。次いで、不動産業(37.3%)、教育機関(36.7%)が上位にあがった(「その他」の企業を除く)。
運輸業では同回答比率は20.0%にとどまり、他業種に後れを取る結果になった。
電子帳票サービスの利用状況についても、「すでに利用している」との回答は、情報サービス業で44.2%、運輸業で16.8%。中間順位に変動はあったものの、最上位と最下位は改正電帳法への対応状況と同様の業種となった。
売り上げが高い企業では電子帳票サービスの利用が進む
電子帳票サービスの利用率は、企業の売り上げ規模に比例して高くなる。
売り上げ1000億円以上の企業では42.7%が電子帳票サービスをすでに利用していると回答した。続く売り上げ300億〜1000億円未満の企業では36.5%。売り上げ10億〜50億円未満の企業では20.6%との結果になった。
調査はウイングアーク1stが22年2月4〜10日、売上高10億円以上の企業に所属するビジネスパーソン2231人を対象に、インターネットで実施した。
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