コロナ予算77兆円に見識はあったのか:なぜこんな結果に(1/4 ページ)
空前絶後とされた2020年度の補正予算には根本的な謎がある。新型コロナ対策のために「実質的な支出」を倍増させたはずの補正予算がもたらしたものはGDPの大幅な落ち込みだった。なぜこんな結果になってしまったのか。実は必然だったという側面があるのだ。
日沖博道氏のプロフィール:
パスファインダーズ社長。30年にわたる戦略・業務コンサルティングの経験と実績を基に、新規事業・新市場進出を中心とした戦略策定と、「空回りしない」業務改革を支援。日本ユニシス、アーサー・D・リトル等出身。一橋大学経済学部、テキサス大学オースティン校経営大学院卒。
77兆円、22兆円、31兆円。これら3つの数字は順に、2020年度(令和2年度)の補正予算の合計、同年度の日本のGDPの減少額、そして翌2021年度に繰り越された繰越金である。ではこの3つの数字が意味するところは何か、それを考えてみよう。
合計77兆円(正確には76.8兆円)という補正予算額の規模が空前絶後だったことを覚えている方も少なくなかろう。小生も驚くと同時に危機感を持ち、翌年度の予算額の感覚がおかしくなっていることを警告したものだ(政府財政の緩んだ「タガ」がモラルハザードを生んでいる』)。
何せ前年度の国家予算101兆円から国債費(要は借金の借り換えと利払い)の23.5兆円を除いた「実質的な支出」の額が77.5兆円なのだから、それとほぼ同じ額の補正予算を組んだことになるのである。これでは「補正予算」などと言えるレベルではなく、2年分の予算を組んだのと変わりない。
その巨額さの正体は、何でもかんでもぶち込んだ「寄せ集め」予算なのである。要は、従来だったら却下されていたはずの「不要不急」のテーマの案件でも「この際だから」とばかりに計上されているのだ。この辺りは昨年末のNHKで放送されていた『検証 コロナ予算77兆円』に詳しい。
第二の22兆円というGDPの減少額もまた巨額である。内閣府のGDP統計によると2019年度の名目GDPは557.2兆円、2020年度は535.3兆円(それぞれ4半期ごとの年率換算値を平均した数値)であり、その差21.9兆円である。「世界経済が落ち込んだのだから仕方ない」との見方もあろうが、日本はコロナ前から景気が落ち込んでいた処からさらに一段落ち込んだ訳だ。底が抜けた状態と言える。
それにしても、当時の政府は元々の78兆円の実質支出に加えて77兆円も余分に使って(つまり155兆円もの倍額予算を投入して)さらなる景気悪化を食い止めることができなかったということになる。かほどに予算の使い方がへたくそな政府は珍しいと当時の安倍政権を酷評している識者が何人もいるが、もっともだ。
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