業界トップの「イセ食品」に衝撃! なぜ卵のように転がり落ちたのか:スピン経済の歩き方(1/6 ページ)
「森のたまご」などで知られるイセ食品が、債権者から会社更生法を申し立てられた。鶏卵業界のトップがなぜ追い詰められたのか。背景に“つくりすぎ問題”があって……。
「えっ! いつもスーパーで買っているあの卵が?」と衝撃を受けた方も多いのではないか。
「森のたまご」「伊勢の卵」で知られる鶏卵業界トップのイセ食品(東京都千代田)が、債権者から会社更生法を申し立てられた。同社は自社ブランドだけではなく、「ライフ」など大手スーパーのプライベートブランドの卵製品なども多数生産しており、まさしく日本人の食卓を支えていると言っても過言ではない。
しかも、イセ食品はわれわれ日本人が大好きな「世界に誇る日本企業」でもある。1980年に米国に進出すると大型M&Aを繰り返してまたたく間に販売網を広げて、84年には合計生産量、販売量とも全米1位となる。現在は中国、インド、ASEANにも拠点を広げて、2021年6月末に退任した前会長兼社長の伊勢彦信氏は「世界のエッグキング」としてその名を轟(とどろ)かせてきた。
ちなみに、伊勢氏は世界屈指の美術品コレクターとしても有名である。ピカソやルノワール、古代の中国陶磁器など幅広い美術品で知られる“イセコレクション”の今後の動向にも注目が集まっている。
そんな「世界のイセ」が会社更生法を申し立てられた。しかも、その債権者の中には伊勢氏の息子・俊太郎氏が経営している会社もあって、親子間で経営をめぐる確執があったのではという憶測も流れている。このような衝撃的なニュースを耳にすると、「あれ? そういやちょっと前にも卵関係の立派な企業でなんかあったような……」と感じる方もいらっしゃるのではないか。
それは、一時期CMなどで話題になった「きよら」で知られる鶏卵業界ナンバー2のアキタフーズである。
同社の元代表、秋田善祺(よしき)氏は18年から20年にかけて農林水産大臣(当時)の吉川貴盛元衆議院議員に500万円などを渡したなどとして、贈賄と政治資金規正法違反の罪に問われており、21年10月には東京地裁で、懲役1年8月、執行猶予4年が言い渡されているのだ。
では、なぜ鶏卵業界を代表するツートップが相次いで道を踏み外してしまったのだろうか。「たまたま悪いニュースが重なっただけでしょ」と思う方も多いだろうが、両者の「転落」の軌跡を振り返れば、この業界を長く蝕(むしば)んできた構造的問題が影響しているような気もしている。
それは、「たまご供給過剰問題」である。
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