コロナ予算77兆円に見識はあったのか:なぜこんな結果に(2/4 ページ)
空前絶後とされた2020年度の補正予算には根本的な謎がある。新型コロナ対策のために「実質的な支出」を倍増させたはずの補正予算がもたらしたものはGDPの大幅な落ち込みだった。なぜこんな結果になってしまったのか。実は必然だったという側面があるのだ。
いったい77兆円の補正予算はどういうものに投入されたのか、素朴な疑問を覚えてくるだろう。名古屋商科大学ビジネススクールの原田教授の調べによると、所得保障(雇用調整助成金、持続化支援金、新型コロナウイルス対応地方創生臨時交付金など)が最大の17兆円、「国民一人当たり10万円の給付金」が13兆円、融資が14兆円、医療費が12兆円といったところが大きな支出項目である。
これ以外には「強靭な経済構造構築」とか「デジタル、イノベーションによる生産性向上」「国土強靭化」といった名目のものが合わせて9.4兆円ほどあり、これらがどうコロナ対策なのか、誰も説明できないだろう。先のNHK特集で特に突っ込まれていた部分である。
これらの予算執行先で最も景気対策に役立たなかったと考えられるのが、国民一人当たり10万円をばらまいた給付金13兆円であろう。この給付金のうちどれだけが消費に回ったかを調査・分析した報告が幾つかあるが、概ね25%程度であることを内閣府の経済財政分析担当の政策統括官が認めている。つまり公明党が選挙目当てでねじ込んだこの巨額ばらまき予算の3/4は貯蓄に回っただけで、無駄だったのだ。同じように乗数効果の小さい案件は他にも多そうだが、後はNHKの検証チームなどにお任せしよう。
それにしても(こうした無駄な予算が目立つとしても)77兆円もの補正予算を投入しておきながら22兆円もGDPを減少させることが本当にできるのだろうか、素朴な疑問が沸く。そこで気づかされるのが先に挙げた第3の数字、翌年度に繰り越された繰越金31兆円(正確には30.8兆円)なのである。
なんのことはない。日本政府は77兆円もの補正予算を計上しておきながら実際に執行されたのはその6割に過ぎず、残り4割に相当する30.8兆円は2020年度内に使い切れずに翌2021年度に繰り越されたのである。そりゃあ景気の落ち込みを十分に抑えることもできずに、ずるずるとGDPが減少するに任せてしまったのも不思議ではない。
要するに2020年度の補正予算の問題は、77兆円という見かけだけは膨大な予算を計上しながら、その内訳としてあまりに乗数効果が小さい政策への投入が巨額に上った上に、多くの不要不急の案件を含んだため約31兆円もの使い残しを生じ、全体として景気下支えを十分にできず、結果として22兆円ものGDPの減少につながった、という話なのだ。かなり情けない政策のあり方である。
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