ロシアのルーブル安を笑えない? 日本円もひっそりと「大暴落中」のナゼ:古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(3/3 ページ)
ロシアがウクライナを侵攻し始めてから、同国通貨単位である「ロシアルーブル」は対円相場で18%暴落した。しかし、ルーブルが対岸の火事になっていると認識するのは早計だ。このところ日本円も大幅に円安、つまり暴落しているのだ。
相場の変動には要注意
円安の主要な原因が内外金利差にあるとすれば、リーマンショック前夜となった07年から08年の円安相場がフラッシュバックする。07年の上旬に1ドル124円程度まで上昇したドル円相場は、翌年からの世界金融危機(リーマンショック)を経て、高値更新からわずか4年余りで76円前後までの急激な円高を経験した。
09年6月に発表された日銀レビューによれば、このような値動きには金利差を利用したキャリートレードが金融不均衡を拡大させてしまったと分析している。金利の低い通貨を売り、金利の高い通貨を、先物やFXなどのレバレッジをかけた商品で積極運用した結果、ポジションの巻き戻しによって金利の高い通貨が過剰に処分され、金利の低い通貨が大きく買い戻されることになったということだ。
このような過去の教訓を踏まえれば、今の状況もまさにドルの急落リスクと、円の急騰リスクがじわじわと広がっている段階である可能性に注意を払いたい。
あまりに恐怖を煽(あお)ることは適切ではないが、為替相場だけでなく原油相場をみても世界金融危機前夜と22年の原油高の間に共通点が多いことも頭の隅にいれておきたい。08年当時の原油高要因といえば、イラン情勢の緊張が高まるという地政学リスクと、米国におけるインフレ懸念の高まり、そして日欧米間の金利格差拡大観測という3つの要因が重なったことが背景にある。これにより、当時のニューヨーク原油先物相場は一時史上最高値の147.27ドルまで上昇していた。
一方で、足元の原油価格は115.45ドルとリーマン前の史上最高値に迫る勢いで上昇している。底値からの上昇速度は08年までの原油高を遥かに上回るスピードであり、そこからの巻き戻しと経済停滞の危険性には十分注意しておきたい。
筆者プロフィール:古田拓也 オコスモ代表/1級FP技能士
中央大学法学部卒業後、Finatextに入社し、グループ証券会社スマートプラスの設立やアプリケーションの企画開発を行った。現在はFinatextのサービスディレクターとして勤務し、法人向けのサービス企画を行う傍ら、オコスモの代表としてメディア記事の執筆・監修を手掛けている。
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