原油価格が史上最速ペースの値上がり 「第三次オイルショック勃発」の可能性も:古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(1/3 ページ)
原油価格が歴史上類を見ないスピードで値上がりしている。2020年にはマイナス価格になったこともあるNY原油先物が、22年の初めには75〜80ドル近辺まで値上がりした。そして3月に入ると、年初からさらに4割も暴騰し、一時は1バレル=112ドルを突破したのだ。
原油価格が歴史上類を見ないスピードで値上がりしている。2020年にはマイナス価格になったこともあるNY原油先物が、22年の初めには75〜80ドル近辺まで値上がりした。そして3月に入ると、年初からさらに4割も暴騰し、一時は1バレル=112ドルを突破したのだ。
WTI原油先物の長い歴史を振り返ってみても、このスピードは異例中の異例だ。過去の例では、1999年に20ドル付近で上昇基調に転じた原油価格が100ドルを超えるまで、実に8年の歳月がかかっていた。しかし、今回はそのような値動きをわずか1年たらずで実現してしまったのだ。
これまで、湾岸戦争やイラク戦争といった産油国の事情が「第一次・第二次オイルショック」を招き、石油製品やトイレットペーパーといった日用品の買い占め騒動を引き起こした。しかし、足元の価格上昇は先のオイルショックとは比較にならないほど急速に推移している「第三次オイルショック」状態といっても過言ではない。
コロナ禍による流通コストの増大や、世界的なインフレが発生していたところに、産油国であるロシアのウクライナ侵攻が重なった。産油国のロシアがSWIFTから排除されると、天然資源の貿易が事実上凍結され供給も絞られる。これが一段高の決め手となった。
足元の円安基調も相まって、小麦製品を中心に大手食品メーカーが大幅な値上げを続々と発表している。このような状況での原油高は、家計にとってさらなる追い討ちとなる可能性が高い。
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