2015年7月27日以前の記事
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原油価格が史上最速ペースの値上がり 「第三次オイルショック勃発」の可能性も古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(2/3 ページ)

原油価格が歴史上類を見ないスピードで値上がりしている。2020年にはマイナス価格になったこともあるNY原油先物が、22年の初めには75〜80ドル近辺まで値上がりした。そして3月に入ると、年初からさらに4割も暴騰し、一時は1バレル=112ドルを突破したのだ。

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不本意な物価2%上昇の達成、目前に?

 値上げラッシュは、物価の上昇をもたらす。そのため、「第三次オイルショック」は日銀が継続してきた異次元緩和の重要な成果指標である「年率2%のインフレターゲット」を達成する重要なファクターだ。

 というのも、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの藤田副主任研究員の推計によれば、原油価格が1バレル100ドルまで上昇すると日本の消費者物価指数は1.7%上昇するという。この推計結果は21年10月に公表されたもので、当時の消費者物価指数は、前年同月比+0.1%であった。ここから考えると、1バレル112ドルという今の水準が続けば、国内の消費者物価指数も前年同月比で+2.0%を超えてくる可能性が高く、数字だけを見れば日銀の政策目標は達成されたようにもみえる。


イメージ(写真提供:ゲッティイメージズ)

 しかし、過去2度にわたって発生したオイルショックによる原油高は、世界各国にスタグフレーションを撒き散らした。スタグフレーションとは、景気が後退しているにもかかわらず物価が上昇する状態を指す。通常、景気が悪い中で物価が上がる場面は限定的であるが、オイルショックのような資源価格によってモノやサービスのベースとなるコストが上昇してしまうと、景気が悪くても値段を上げざるを得ないという状況に陥る。

 それでは日本はスタグフレーションの状況に陥っているといえるのであろうか。厚生労働省が2月に公表した21年12月の毎月勤労統計によれば、賃金上昇率から物価上昇率を除いた「実質賃金」は前年比2.2%減少した。つまり、21年に2.2%以上賃上げされなかった労働者は、実質的には給与が下がっているということになる。

 ここで、令和3年の春闘における平均賃上げ率を確認すると、前年比で1.86%の賃上げで妥結していた。春闘の対象になるのは資本金10億円以上かつ従業員1000人以上の労働組合のある企業のうち343社だ。いわゆる大企業も、ベースアップ率がインフレに負けている状況だ。

 そうするとすでに足元では過去のオイルショックと同じく、日本もスタグフレーション入りし始めているといっても過言ではない。

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