エルサルバドルがビットコインを法定通貨にして大損? IMFも懸念を表明した理由:古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(1/3 ページ)
今がバブルにあるかといわれるかといわれれば、そうでないのかもしれない。しかし、エルサルバドルが国家が発行権を持たないビットコインを法定通貨としたことは、上記のバブル列伝と肩を並べる“無謀なこと”と、将来評価される可能性がある。
バブル時代には、今から考えれば無謀とも思えるさまざまなアイデアが生まれ、消えていった。
バブルを象徴する産物の1つとして「東京バベルタワー」が挙げられる。これは、1992年のブラジル地球サミットにて尾島俊雄教授(現・名誉教授)が発表した、山手線の内側の敷地を全て使って、1つの巨大なビルを建設するという計画である。「東京バベルタワー」には、3000万人が居住可能で、総工費3000兆円、高さ1万メートル、工期は100年以上もかかる代物であったという。
この構想はバブル崩壊と共に立ち消えてしまったが、この他にも山手線の内側における土地の資産価値だけで米国全土が買えてしまうといったものや、タクシーを止めるために一万円札を出すといったものがあった。冷静になって見れば、異常な現象が起こるのも景気のピークを示すシグナルなのかもしれない。
今がバブルにあるかといわれれば、そうでないのかもしれない。しかし、エルサルバドルが国家が発行権を持たないビットコインを法定通貨としたことは、上記のバブル列伝と肩を並べる“無謀なこと”と、将来評価される可能性がある。
エルサルバドルはどんな国?
エルサルバドルは中米に位置する人口約660万人の国で、世界銀行によれば、2020年の名目GDPは246.4億米ドルだった。日本でいえば、ちょうど徳島県と同じくらいの経済規模である。
エルサルバドルにはかつてコロンという自国通貨が存在したが、通貨の安定のため1993年にはドルペッグ制を採用し、2001年には法定通貨を完全に米ドルに移行したという歴史を持つ。
巷ではエルサルバドルのビットコイン法定通貨化に対して、自国の通貨を放棄するリスクを懸念する声もあった。しかし、自国の通貨を持たない国は他にも、エクアドル(米ドル)やジンバブエ(米ドル・南アランド)、リヒテンシュタイン(スイスフラン)など数多く存在している。広い意味でいえば、ドイツやフランスといったEU加盟国の多くもユーロという統一通貨を使用していることから、自国通貨を放棄したといっても過言ではない。
そのような意味では、暗号資産の法定通貨化は、これまで歩んできた通貨の歴史の延長線上を歩いているようにも思える。現に、リラ安に苦しむトルコ国民は、自国の通貨よりも暗号資産を選好する傾向を見せている。つまり、その国の金融政策がおぼつかない場合、ある程度の世界的なコンセンサスが得られているビットコインのような暗号資産の方が、国の発行する通貨よりも信頼度の点で勝ると見る動きもあるわけだ。
しかし、エルサルバドルがビットコインを法定通貨にしてわずか2カ月で、ビットコイン価格はピークアウトしたのである。
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