アパレル業界の「悪しき慣習」を打破? 「100%土に還る服」のサブスクが面白い:自社で農園を保有(1/2 ページ)
アパレル業界の大きな課題といえば、「大量生産・大量消費」を想像する人が多いのではないか。2018年、高級ブランドのバーバリーが42億円相当の売れ残り商品を焼却したことも話題になった。そんななか「100%土に還る服」をサブスクする企業があるという。どういう素材を使っているのだろうか? 採算は取れるのか? 気になるギモンをぶつけてみた。
着古した服はどう処分するのが一般的なのだろうか。環境省が調査したところ、「可燃・不燃ごみとして廃棄」(66%)が最多だった。要は、「ごみの日」に生ごみなどと一緒に服も捨てる家庭が過半数を占めているということだ。
その他には「地域・店頭での回収」「古着として販売」「資源回収」などが挙げられた。ここに新たに「土に埋める」という選択肢が加わるかもしれない。デザイン会社のシンクスドットデザイン(東京都港区)がそんな未来を創ろうとしている。
同社は2021年6月、”100%土に還(かえ)る服”として販売したTシャツのサブスクリプションサービス「Syncs.Earth(シンクス.アース)」を始めた。サービス開始当初のアイテムはTシャツのみ。最低着用期間は4カ月で月額980円とした。現在は、シャツやズボンなど計14アイテムまで拡充し、月額利用料金は1980円に設定している。
「100%土に還る服」とはどういうことなのだろう。生ごみなどをコンポストに入れてたい肥にするという話は聞くが、「服を土に埋めよう!」という話はあまり聞かない。サービスを運営するシンクスドットデザインに話を聞いたところ「貸し出す服は全て、土に還すことができる素材で作っている」という答えが返ってきた。
「当社では和紙から作った糸とオーガニックコットンを素材として採用しています。実証実験では、和紙は約3カ月、オーガニックコットンは約6カ月で完全に土に還りました」(シンクスドットデザイン澤柳直志氏)
土に埋める服の選定基準は、服の状態によってさまざま。しかし、半分以上生地がないなどボロボロな状態にならない限り、修繕したり、靴下などの他のアイテムに生まれ変わらせたりできるという。
サービスを開始してから日が浅いこともあり、実際に返ってきた服を埋めた実績はまだない。しかし、服を製造する過程で発生する裁断くずは土に還していて、重さは服1000着分に上る。
「服を作るうえで、生地の20〜30%は裁断くずになってしまいます。今までは服と同様に焼却処分が当たり前でしたが、裁断くずも服の一部と捉え、土に還すようにしています」(澤柳氏)
同社の「服を土に還す」取り組みの徹底ぶりは、こんなところまで広がる。東京の市内で耕作放棄地を自社でレンタルしているのだ。コンポストに入れて発酵させ、たい肥化するやり方も採用しているという。現在の服の廃棄量から考えると、コンポストで十分な気がする。なぜ農園を所有するほどに規模を拡大するのか?
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