霞が関でも導入 民間企業がよく使う「若手の声を聞く作戦」に潜む欺瞞:その取り組み、「裏」があるかも(1/4 ページ)
組織が抱える課題を打破するためによく使う「若手の声を聞く作戦」。もちろん、十分に活用できればメリットがあるが、その一方で“欺瞞”もあるようで……。
3月11日、NHKは「2050年の国家公務員の働き方は? 若手職員チームが報告」というニュースで、若手の中途退職などが課題となっている霞が関の取り組みについて報じました。
記事によると、若手チームがまとめた国家公務員の将来像として、「官民でプロジェクトごとに横断的に働くようになる」「省庁間の垣根を超えた異動が行われるようになる」「管理職のポストが公募制になる」「年功序列がなくなる」などが示されています。今後はこの将来像に対する意見を広く募り、働き方の改善に向けた提言が取りまとめられることになります。
同じように民間においても、若手の意見を聞いて改善に取り組もうとする「若手の声を聞く作戦」はよく見られます。会社内の若手からメンバーを選抜し、プロジェクトチームを組んで意見を出してもらい、その意見を上層部が検討する――という流れです。
冒頭で紹介した霞が関のケースは、若手の中途退職が課題になっていることから当事者の意見を聞きたい、というのが主な意図のようです。一方、会社が「若手の声を聞く作戦」を実施する背景はさまざまです。多くの会社に共通する主な目的として3点挙げられます。
1つ目は、斬新なアイデアへの期待です。役員や管理職、ベテラン社員などは豊富な経験があるものの、その経験が仇となり、どうしても先入観でものごとを見てしまう嫌いがあります。若手層は経験が浅い分未熟かもしれませんが、先入観にとらわれることなく柔軟な発想や斬新なアイデアを生み出すことが期待されます。
目的の2つ目は、社内の風通しをよくすることです。若手層の声を聞く姿勢を一つの象徴的な事例にして、一方的な上意下達ではなく、社員の考えを尊重し、職責や社歴にとらわれず自由闊達に意見交換できる職場環境を整えるのがゴールです。
最後は、当事者意識の醸成です。会社から意見を聞かれることは、若手層にとって会社全体の視点から施策を考える貴重な機会となります。その経験を通して若手層に視野を広げてもらい、自分自身も会社を支える当事者の一人である、という気付きを促します。
会社から「これからはあなたたちの時代です。忌憚なくどんどん意見を出してください」と投げかけられると、色んな思いを胸に秘めていた若手社員の心に希望の灯がともります。そして意気に感じた若手社員たちから、実際にさまざまな意見が出てきます。
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