平均60.3歳──老いる社長、緩やかに進む「会社の自殺」:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(1/4 ページ)
社長の高齢化が進み、ついに平均年齢は60歳を上回った。「高齢だからダメ」ということはないが、社長という“権力の座”に同じ人が長く座ることで、組織にはさまざまな弊害が出てくる。
社長さんの平均年齢が、またまた過去最高を更新しました。
帝国データバンクによれば、2021年の日本の社長の平均年齢は60.3歳で、1990年以降31年連続で過去最高を更新。年代別では、「50代」が27.6%を占め最多であるのに対し、4人に1人が「70代以上」。うち80代は全体に占める割合は4.7%と低いものの、増加傾向にあることが分かりました。
社長の高齢化の進み具合は、以下のグラフを見れば一目瞭然です。
個人的には、私が20代の頃の社長の平均年齢が、54歳と意外と若かったことには驚きましたが、今後はさらに、社長の高齢化が進むことが懸念されています。「社長の年齢と業績は反比例の関係にある」という研究結果が一貫して得られているので、ますます日本の企業は弱体化するリスクをはらんでいるのです。
むろん、「若い=良い、高齢=ダメ」というわけでも、若いほど経営者として優れているわけでもありません。
しかしながら、「権力は人を堕落させる」と言われる通り、人はしばしば自分でも気が付かないうちに権力の影響を受け、その影響力は極めて強力かつ広範囲におよびます。特に権力の働きがシステマティックに埋め込まれた会社組織では、権力者の言動は上司部下関係のみならず、関連する団体や組織、一般社会にも影響を与えます。同時に、 権力者は他者からの干渉を免れることが可能です。
それが権力者の「絶対感」の増幅につながるのです。
どんなに誠実で、聡明な社長さんでも、うっかりと、うかつにも権力で生じる「絶対感」に酔いしれ、堕落し、幼稚化し、組織を腐敗させてしまうのです。
しかも、しまつが悪いことに、絶対感が高まった人ほど、他者の助言と正反対の決断に走りやすい傾向が強いことが調査研究で示されています。
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