平均60.3歳──老いる社長、緩やかに進む「会社の自殺」:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(2/4 ページ)
社長の高齢化が進み、ついに平均年齢は60歳を上回った。「高齢だからダメ」ということはないが、社長という“権力の座”に同じ人が長く座ることで、組織にはさまざまな弊害が出てくる。
それだけではありません。
長いこと権力の座=社長の立場に居続けると、社長に寄生する、いい匂い好きの輩=粘土層が量産されます。
粘土層は、忖度(そんたく)という技を最大限に駆使し、社長の意見に異を唱える反抗勢力つぶしにことごとく参戦します。「前例がない」「組織の論理が分かっていない」が口癖の人たちです。
以前、「社長もクビにできる組織や委員会の設置」が検討されたこともありましたが、経営者団体からの反対が相次ぎ、監査等委員会設置会社というハードルを下げた中間の制度に落ち着いたことがあります。
本来、最高のパフォーマンスを発揮するには、ある程度の緊張感が必要です。
「下手な経営をすると、クビになるかもしれない」という緊張感、いわゆる“ヤーキーズ・ドットソンの法則”が機能する制度が広まれば、在籍期間に関係なく、経営の質は担保されると期待できます。
しかし、現実はよほどの不祥事が起きない限り、椅子を奪われることはない。少々言い過ぎかもしれませんが、「自分から辞める」と社長が言い出さない限り、社長に居続けることが可能なのです。
いずれにせよ、時代が変われど日本の組織は「ウチ」と「タテ」。権力の独占が起こりやすい組織構造です。おまけに経済成長が鈍化し、先行きが不安定な現代社会では、どうしたって権力者への依存度が高まりがち。
さらに人は年齢を重ねることで「喪失」への恐怖が次第に増し、自分が考えている以上に「今あるもの」を手放すのを恐れる動物です。
社会的な地位や役割が失われることで、自分の存在価値まで失われてしまうのでは? と不安になり、知らず知らずに既得権益にしがみつく。一方、老いた脳はすぐ忘れ、物事のプライオリティを決める能力が低下し、相手の身になって話す力も低下します。脳の老化は得意分野以外の部分から進むため、過去の栄光は最後まで残り続けます。
「オレって、こんなにすごかったんだぜ!」と過去の栄光をつい口走ってしまうのは、いわば脳が老化している証拠なのです。
とあれこれ書いてきましたが、最大の問題は権力の座に長いこと居座ること。その座に就く年齢が高ければ高いほど、組織はへたります。「会社の自殺」につながるのです。
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