霞が関でも導入 民間企業がよく使う「若手の声を聞く作戦」に潜む欺瞞:その取り組み、「裏」があるかも(4/4 ページ)
組織が抱える課題を打破するためによく使う「若手の声を聞く作戦」。もちろん、十分に活用できればメリットがあるが、その一方で“欺瞞”もあるようで……。
冒頭で紹介した記事では、「霞が関の慣習や古いやり方にとらわれず、大胆に自由に勇気を持って提言してくれることを願っている」という、若手チームに対する大臣コメントが紹介されています。
心強く励まされる言葉だとも感じますが、若手チームの報告にあった内容は、どれも実現させるハードルが高く難しい提言です。そこにあらためて大胆な提言を求めるということは、組織を根本から作り変えるほど強い覚悟がある表われなのかもしれません。しかし、もし提言内容のほとんどが実現しない結果に終わったとすると、パフォーマンス主義の典型だったように見えてしまいます。
経験が浅い若手層の意見ですから、未熟さがあるのは当たり前です。「若手の声を聞く作戦」を成果に結び付けるには、経営者や管理職が若手の声を尊重し、どうやって実現させるかをともに考え、支援する必要があります。社員が離れていくことを心配する会社が真っ先に取り組むべきは、見栄えのよい施策を次々と生み出すことではありません。会社自身が変わろうとする真摯(しんし)な姿勢を示し、会社優位の運営で染み付いてしまったパフォーマンス主義から脱却することなのです。
著者プロフィール・川上敬太郎(かわかみけいたろう)
ワークスタイル研究家。1973年三重県津市出身。愛知大学文学部卒業後、大手人材サービス企業の事業責任者を経て転職。業界専門誌『月刊人材ビジネス』営業推進部部長 兼 編集委員、広報・マーケティング・経営企画・人事部門等の役員・管理職、調査機関『しゅふJOB総合研究所』所長、厚生労働省委託事業検討会委員等を務める。雇用労働分野に20年以上携わり、仕事と家庭の両立を希望する“働く主婦・主夫層”の声のべ4万人以上を調査したレポートは200本を超える。NHK「あさイチ」他メディア出演多数。
現在は、『人材サービスの公益的発展を考える会』主宰、『ヒトラボ』編集長、しゅふJOB総研 研究顧問、すばる審査評価機構株式会社 非常勤監査役、JCAST会社ウォッチ解説者の他、執筆、講演、広報ブランディングアドバイザリー等の活動に従事。日本労務学会員。男女の双子を含む4児の父で兼業主夫。
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