ちょっと前までブームだったのに、なぜ「高級食パン」への風当たりは強いのか:スピン経済の歩き方(7/7 ページ)
どうやら「高級食パン」のブームが終わるようだ。最近、さまざまなメディアがこのように報じているわけだが、なぜ「高級食パン」への風当たりは強いのか。その背景には、2つの理由があって……。
高級食パン側から見捨てられる日
これを解決するには、産業構造の転換を促す、継続的な最低賃金の引き上げが不可欠なのだが、残念ながら政治の力でそれを断行しようとすると、選挙でボロ負けするか支持率が急落するので、失業したくない政治家はこの問題をウヤムヤにして先送りするしかない。
ということは、まだしばらく「安いニッポン」は続くということであり、「高級食パン」や「高級米」もじわじわと窮地に追いやられるということだ。
コシヒカリなど高級ブランド米と同じく、「嵜本」「乃が美」という高級食パン専門店も、こぞって海外進出を目指している。現状ではまだなかなか難しい戦いではあるが、高級米や高級食パンが生き残っていくには、日本よりも賃金が順調に上がっている欧米、中国、台湾、東南アジアなどに標的を絞ったほうがよほど未来はある。
「高すぎる」「ブームはおしまい」なんて感じで、「高級食パン」をディスっている人も多いが、あと10年もしたら「高級食パン」側から見捨てられているのは、「安いニッポン」で貧しくなっているわれわれのほうかもしれない。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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