今年は36の上場企業が社名を変更へ 増加中の「社名変更」がもたらす4つの経営効果とは:古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(2/3 ページ)
年度が更新される4月1日に13の上場企業が社名を変更しており、4月は例年どおり改名の月となる。2022年には30社以上の上場企業が社名を変更する予定で、今年は非上場の有名企業も積極的に社名変更を行うようだ。名は体を表すというが、企業の改名にはどのような経営目的・効果があるのだろうか。
社名変更、4つの目的・効果
企業が社名を変更する主な目的は、大きく分けて4つ挙げられる。
最も典型的な例は、経営実態に合わせた社名の変更だ。これは改名というよりは「修正」といった方がより適切なのかもしれない。ガバナンス体制の変化に伴って行われる社名変更である。事業会社が持株会社体制へ移行する際に、元の商号に「ホールディングス」や「グループ」を付けるパターンが一般的だ。
今年の事例では「オープンハウス」が「オープンハウスグループ」と改名したり、「パナソニック」が「パナソニックグループ」と改名したりするパターンが挙げられる。
「修正」という文脈では、企業のステークホルダーが出入りする関係で社名を変更しなければならないパターンもある。今年の例でいえば、「岡藤日産証券ホールディングス」が「日産証券グループ」に変更したり、非上場企業では老舗アニメ制作会社の「サンライズ」が「バンダイナムコフィルムワークス」に社名変更する事例もこれに当たるだろう。
上記いずれの事例も、グループ事業の再編や経営統合を機に名称を見直している。
社名変更理由の2つ目は、「社名よりも有名になったブランドを社名にしてしまう」というパターンだ。
今年の事例でいえば、「三愛石油」が、自社ブランドである「obbli」を交えた「三愛オブリ」に変更している。非上場企業では、「日本クラウドキャピタル」が自社の運営するサービス名と同じ「FUNDINNO」へ社名変更することを明らかにしている。
社名とブランド名が併存している場合、両者ともに周知させるコストは高くなる。ブランド名を社名にしてしまうことで、イメージ戦略とそのコストを効率化させることが可能になる。
太客外国人に分かりやすい社名に
3つ目が、国際化を意識した社名の変更だ。
今年の事例で言えば、「大日本住友製薬」が「住友ファーマ」と社名を変更しているほか、 機械やセメント事業を手がける「宇部興産」がグローバル化を進めるために「UBE」へ社名を変更した。
これは、日本市場における株主の構成も一躍買っているといえるだろう。日本取引所グループの調べによれば、20年度における国内の上場企業のうち、外国人株主の持ち株比率は全体の30.2%を占めるという。つまり、市場で株を買ってもらうためには、日本市場の“太客”である外国人向けにも分かりやすいブランドとした方が、イメージを想起してもらいやすいという効果もあるのだ。
また、住友ファーマは海外売上高比率が63%と大部分を占めており、UBEも28%と決して小さくない規模の売り上げが海外由来となっている。海外でのブランド展開戦略を優位に運んでいく上で社名変更を選択する企業も増えているのかもしれない。
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