今年は36の上場企業が社名を変更へ 増加中の「社名変更」がもたらす4つの経営効果とは:古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(3/3 ページ)
年度が更新される4月1日に13の上場企業が社名を変更しており、4月は例年どおり改名の月となる。2022年には30社以上の上場企業が社名を変更する予定で、今年は非上場の有名企業も積極的に社名変更を行うようだ。名は体を表すというが、企業の改名にはどのような経営目的・効果があるのだろうか。
「日本ユニシス」が「BIPROGY」に
4つ目が、企業の経営方針やビジョンを表す姿勢を示すために名称を変更するパターンだ。
今年の国内事例でいえば、「日本ユニシス」が「BIPROGY」に社名変更した例が挙げられる。同社は1988年から日本ユニシスの名称で事業を展開しており、国内でも一定のブランド知名度を有していたはずだ。フェイスブックよりも長い期間「日本ユニシス」のブランドで親しまれてきたが、2030年を見据えた新経営ビジョンの策定に伴って唯一のブランド名に変更したという。
ちなみに、日本ユニシスとして事業を行なっていた06年の時点で、米国のユニシスコーポレーションとは資本関係を解消している。この時、同社は日本国内における「Unisys」という商標権を米ユニシスから250億円で購入し、解消後も社名に「ユニシス」を入れていた。
現在も米ユニシスとBIPROGYの間には協力関係があるものの、BIPROGYの国際展開を考えたときに、旧来の商号にはさまざまなデメリットがあるという。旧来の商号では「日本」という内向きなイメージの単語が含まれているだけでなく、「ユニシス」の部分も米ユニシスと商標権やブランドの観点でバッティングしてしまう。
BIPROGYのCEOである平岡昭良氏のトップメッセージには、ユニシスというブランドから脱却し、「世界で唯一無二のブランドを手に入れたい」というビジョンが示されている。その姿勢を最も効果的に伝えるには、社名の変更が効果的だ。そして、メタの事例と同じく、変更前の商号が有名であればあるほど、そのビジョンへの覚悟を強く伝えることができる。
BIPROGYと米ユニシスの間では協力関係が継続されるものの、現在は資本関係がない。そのため、ユニシスの商標を含まない社名への変更は企業実態にも則してるといえる。
このように考えると、BIPROGYの事例はこれまでに挙げた4つの要因のうち、2つ目を除く全ての要素を含んだ社名変更であるといえる。
その他にも、不祥事等を起こした企業がその事実を見えにくくするために社名を変えてしまうパターンも稀に発生するが、現代ではネットやSNSで社名変更の趨勢が簡単にトレースできてしまう。そのため、安易な社名変更によって誠実性が欠けていると逆に強く印象づけてしまうというデメリットが上回る場合も増えてきた。
社名変更に経営効果をプラスしたいのであれば、そこに至ったストーリーや背景を積極的に発信するだけでなく、それに見合った行動を伴わせるべきである。そうすれば、企業の「改名」は「再編」としてより印象深く世の中に浸透していくだろう。
筆者プロフィール:古田拓也 オコスモ代表/1級FP技能士
中央大学法学部卒業後、Finatextに入社し、グループ証券会社スマートプラスの設立やアプリケーションの企画開発を行った。現在はFinatextのサービスディレクターとして勤務し、法人向けのサービス企画を行う傍ら、オコスモの代表としてメディア記事の執筆・監修を手掛けている。
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