マンション売却潜在層にリーチ 不動産査定でマネフォがツクルバと組む理由(3/4 ページ)
マネーフォワードが家計簿データを活用した異業種提携を加速させている。20年11月に新電力シン・エナジー(神戸市)と「マネーフォワードでんき」を始め、ライフネット生命とも「マネーフォワードの生命保険」を開始した。そして4月11日には、中古・リノベーション住宅の流通プラットフォームを手掛けるツクルバと組んで、「マネーフォワード 住まい」の提供を開始した。
実際に売れる価格を提示
資産としての不動産を正確に評価するには、実は重要なことがある。それはマンションの査定額が「実際に売れる価格」であることだ。これが異なっていると、資産額の正しい評価にはならない。
なぜこんなことを強調するのかといえば、不動産売買の現場では往々にして“売れない価格”が提示されるからだ。マンションを売却するときは、複数の不動産会社に査定を依頼する。ユーザー心理としては、その中で最も高い査定額を付けたところに依頼するだろう。
しかし問題は、その査定額は不動産業者が買い取ってくれる額ではなく、「この額なら売れるのではないか」という想定価格だということだ。つまり、不動産会社側には少しでも高い価格を提示して、選んでもらうインセンティブが働くわけだ。
選んでさえもらえれば、当初の価格で買い手が付かなくても、「少し値段を下げましょうか」というやりとりができる。こうした構造から、不動産の査定額は「実際に売れる価格」とは異なる場合が多くなるわけだ。
そんな中で、ツクルバは「3カ月くらいでは売れていく価格を出している」(cowcamoサプライサイド事業部の森勇貴副事業部長)と、正直さをアピールする。
通常の中古不動産は、売り手側に不動産業者が付き、買い手側にも不動産業者が付く。買い手側の不動産業者は、スーモやホームズなどの不動産ポータルサイトに広告を掲載することで、買い手を見つけるというのが一般的だ。
ところがツクルバの場合、売り手側の不動産業者となるとともに、自社で中古・リノベーション住宅のマーケットプレイスである「カウカモ」も運営。買い手側の不動産業者として仲介も行う。通常の仲介手数料は、片側で物件価格の3%が上限だが、カウカモはいわゆる“両手仲介”が多く、流通総額に対する収益であるテイクレートは直近でも4.4%となっている。
同社の強みは、リノベーションを行った築古物件という、価値判断が難しい物件を数多く取り扱うところにある。不動産の査定は、駅からの距離、広さ、間取り、築年数などの定量データを元に、類似物件が過去にいくらくらいで取引されたかを元に行うのが基本だ。しかしリノベーション物件については、リノベーションの価値を画一的に見積もるのが難しい。リノベをしていない部屋が4000万円で売れたとき、こだわりのリノベをした同じマンションの隣の部屋はいくらが適切かというのは、難しい問題だ。豊富なリノベ物件取り扱い実績から、どんなリノベをしたらどのくらいの金額アップが可能になるかのデータを持っていること。それがツクルバの強みの1つだ。
今後、中古住宅が増加し、リノベが当たり前になっていくなかで、「中古流通促進を進めていきたい」(森氏)という同社の想いが、実際に売れる価格という見積もりにつながっている。
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