「会社も社員もWin-Winな福利厚生」とは? 福利厚生の最新トレンドを知る:連載「情報戦を制す人事」(2/3 ページ)
「従業員が欲しがる福利厚生」と「企業側が実施したがる福利厚生」は、必ずしも一致しません。コロナ禍、テレワークの浸透、賃金の低下傾向、物価上昇──社会状況に伴い、福利厚生のトレンドにも変化が起きています。「企業も従業員も、双方がメリットを享受できる福利厚生」とはどういうものか、探っていきます。
従業員の満足度を高める福利厚生とは
人気のある福利厚生
では従業員の満足感を高めるためには、どのような制度が有効なのでしょうか。一般に、従業員に人気がある福利厚生には以下の例が挙げられます。
- 寮社宅・住宅手当
- レクリエーション関連(スポーツジムや宿泊施設の割引制度など)
- 法定外の健康診断(人間ドックなど)
- 社食・食事補助
また、法定外福利厚生は任意の制度であるため、ユニークな福利厚生も多数存在します。
- 部署をまたいだ交流補助
- 英語をはじめとする外国語講座の提供
- ヨガ講座の提供
- 昼寝
- 福利厚生としての短時間勤務制度
- 妊活サポート
これらは一例に過ぎませんが、企業はさまざまな取り組みを通じてエンゲージメントの向上を図っているのです。
企業側が注力したい福利厚生
次に、「企業側が福利厚生制度をどのように変化させていきたいのか」を考察すると、必ずしも従業員の満足度の高い制度を強化する傾向にはないようです。
日本生命保険相互会社の調査(※2)からは、企業が注力したい福利厚生の領域は以下であることが分かりました。
- 健康経営
- メンタルヘルス対策
- 両立支援(育児・介護)
働き方改革やストレスチェックの義務化といった政府の動きのほかに、人的資本経営・健康経営のトレンドが反映されています。従業員のパフォーマンス向上や家庭の事情で十分に働けない時期への支援を行うことによって労働力を確保することが狙いでしょう。
企業側が縮小したい福利厚生
一方、同じ調査(※2)では、縮小したい福利厚生として以下の2つが挙げられています。
- 寮社宅手当
- 家族手当
(※2)ニッセイ「福利厚生アンケート調査」報告書 p.9より/日本生命保険相互会社
この2つの手当は伝統的な「夫と専業主婦と子どもの世帯」を念頭に制度設計されていることが多いですが、現在はそのような世帯は少数派になっています。そのため、費用対効果が低いことや、成果と直接関係しない個人の状況に応じたサービスは、同一労働同一賃金の考えに馴染まないことが背景にあるでしょう。
実際に経団連が2019年度に実施した調査(※3)からは、住宅関連が法定外福利厚生費の48.2%を占めていながらも、金額としては減少傾向にあることが読み取れます。
(※3)第64回福利厚生費調査結果報告2019年度(2019年4月〜2020年3月)p.10、p.16より/経団連
しかしながら前述の通り、寮社宅手当のような住宅手当はレクリエーションと同様に従業員からの人気が高い福利厚生制度です。これは、生活費に占める固定費削減に目に見える効果があり満足感を得やすいためと考えられます。
また昨今の社会情勢は、所得の低下傾向と同時に今後も物価上昇が続くものと見込まれています。こうした背景から、社員の生活基盤を支えるためには財形貯蓄や社内預金といった福利厚生制度も有効に思われますが、現在の低金利では満足を得られる状況ではないでしょう。
そのため、生活費のうち固定費の削減につながる住宅関連の福利厚生制度を再設計することが従業員のエンゲージメントを高めるには有効と考えられます。
在宅勤務・テレワーク化が進んでいる場合は、住宅手当の代わりに電気代や通信費の補助としての「テレワーク手当」を支給する方法もあります。そうすることで、実質的に居住にかかる費用の補助にもつながると同時に、居住地や居住人数に連動しないため住宅手当以上に平等性が高いといえます。
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