円安で「約40年ぶりの物価暴騰」、上がり続ける負担への対処法は:古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(2/2 ページ)
急激に進む円安が未だに止まる気配がない。4月13日のドル円相場は、1ドルあたり126.3円台まで急騰した。この度の円安とインフレが、企業の収益性も蝕みつつある。
為替予約を行う
為替予約とは、将来における外貨建て決済を一定のレートで予約する取引をいう。例えば、翌月に1万ドルの支払いがある場合に今のレートである1ドル125円で為替予約を行っておけば、来月の円換算支払額が125万円で確定できる。かりに翌月に1ドル135円まで円安が進行した場合、本来であれば135万円支払うべきだったが、125万円の支払いで済み、10万円分の為替損失を回避できることになる。
確かに、翌月に1ドル115円まで急激に円高が進行すると、逆に本来よりも10万円分の負担が増加することにもなる。しかし経営上で重要な点は、予見可能性である点だ。翌月の出費が確定されていない状態でそのほかの経営計画を練るのと、出費を確定させた上で計画を練るのとでは経営の”解像度”に大きな開きがある。
さらに、日銀の黒田総裁が13日に発言した「現在の強力な金融緩和を粘り強く続ける」という内容からは、日本は未だ金融引締めを実施しないという姿勢が明確だ。世界各国がインフレを退治するために自国通貨高をもたらす金融引き締めを行うなか、日本は自国通貨安をもたらす金融緩和を続けている。
黒田総裁の任期が23年4月8日に切れることもあり、市場では異次元緩和がもたらした円安と物価上昇の後始末は後任の総裁に託されるという見方も強まっている。翌年まで日銀が金融引き締めを検討する公算が低いとすれば、月を追うごとに諸外国の金利と日本の金利格差が広がってくるだろう。そう考えると、為替予約によるリスクヘッジは現段階でも有効となり得る。
長持ちする備品を確保しておく
もう一点、企業が取り得る手段は、足元の値上げイベントが価格に織り込まれる前に、まとまった設備投資や消耗品を確保しておくことだ。
例えば、あなたがパン屋さんを営んでいたり、趣味でパンを作る方であれば、小麦が一段と値上がりする直前に通常の備蓄量よりも多い量を調達しておくことで負担を軽減させることができるだろう。小麦粉は、薄力粉であれば一般的に1年ほどもつといわれる。一時的な出費は大きく増加するかもしれないが、長い目でみれば負担軽減に大いに役立つことだろう。無論、この例は小麦粉やパンに限ったことではない。海外由来のハイテク機器や石油関連製品などにも有効である。
ここで、商品が一見値上がりしていないようにみえる「実質値上げ」にも注意が必要だ。実質値上げは、価格を維持する代わりに原材料をより安いものにしたり、品質を削減したり、内容量を減らしたりする形で製造原価の高騰を転嫁する方式である。
例えば100円ショップの製品でも「実質値上げ」が行われる前のものと後のものでは耐用年数や内容量の観点で不利な改定が今後行われる可能性があるため、ある程度長持ちする製品であれば一定数を確保しておくことが有効になるはずだ。
円の対外的な購買力を加味した実質実効為替レートでは、1972年以降で50年ぶりの円安水準となっており、名目・実質の両面で今年の円安は”限界突破”している状況にある。急激な為替の変動を商機に変えることができれば良いだろうが、私たちの多くは「耐える」という方向性で乗り切ることになるだろう。その時は上記のような方策が手助けとなるかもしれない。
筆者プロフィール:古田拓也 カンバンクラウドCFO
1級FP技能士・FP技能士センター正会員。中央大学卒業後、フィンテックベンチャーにて証券会社の設立や事業会社向けサービス構築を手がけたのち、2022年4月に広告枠のマーケットプレイスを展開するカンバンクラウド株式会社を設立。CFOとしてビジネスモデル構築や財務等を手がける。Twitterはこちら
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