クラファン3分で2800万円集めた”マスク型翻訳機” 「今は売上につながらなくてもいい」と社長が話すワケ:「ニューヨーク・タイムズ」も注目(1/3 ページ)
従業員3人のスタートアップが開発したマスク型翻訳機「C-FACE」がコロナ禍で大きな注目を集めた。36カ国約150社から問い合わせがあり、『ニューヨーク・タイムズ』でも紹介された。しかし、ハードウェア認証や日本という国柄の問題でそこまで大きな売り上げにつながっていないのが現状だという。社長は「今はそれでもいい」と話す。その理由とは?
スマート家電、スマートスピーカーなど、多様な「スマートX」が生まれる中、コロナ禍の時流を捉え、世界中で大きな話題になったのがスマートマスク「C-FACE」だ。
C-FACEは、福岡県発のスタートアップ・ドーナッツ ロボティクスが開発した「マスク型翻訳機」だ。2020年のリリース以来、36カ国約150社から問い合わせが殺到。『ニューヨーク・タイムズ』『ニューズウィーク』など、名だたるメディアで取り上げられた。
C-FACEの右側には基盤とバッテリーが、左側にはマイクが埋め込まれている。手持ちのマスクの上から装着でき、話した内容はBluetoothで接続したスマートフォンを通じて再生される。同時に文字起こしをしたり、英語をはじめ8カ国語に翻訳したりもできる。
同社CEOの小野泰助氏によると、実はスマートマスクの構想自体はコロナ禍以前からあったという。
「およそ3年前、当社にいた東大理工学部生の卒業研究が『話したことをスマートフォン上で文字にするマスク』でした。発想は面白いものの、マスク市場は小さく製品化は難しいと当時は判断したのです」
ドーナッツ ロボティクスは16年の創業以来、ロボットの開発を手掛けてきた。17年には「羽田空港ロボット実験プロジェクト」に採択され、羽田空港とともに東京オリンピック・パラリンピックに備えた翻訳ロボットの開発を進めていた。
ところが、新型コロナウイルス感染症の流行により訪日外国人は激減。会社がピンチに陥った時、「世界中の人がマスクをつけている今ならスマートマスクの需要もあるのでは」と思い立ったことで、C-FACEは日の目を浴びることになった。
C-FACEは現在、ホテルや空港を中心に導入が進んでいる。感染対策と国際交流を同時に叶えるデバイスとして、21年の世界体操・新体操選手権でも採用された。今後も世界水泳選手権など、国際大会での使用が見込まれている。
現在はマスクに引っ掛けて使う、縦90×横28ミリの小型でシンプルな2号機を開発中だ。1号機ではスマートフォンを通じて音声を出していたが、2号機では本体のスピーカーから直接音が出るようにした。医療現場や工場など、常にマスクが必要な分野での利用を意識し、翻訳機能よりはマスク越しの声をはっきりと相手に届けることに重きを置く。
「C-FACE開発時から2号機の案はありましたが、マスク型だったからこれほど大きく話題になったのだと思います。最初から2号機を出していたら、ヒットはしなかったでしょうね」(小野氏)
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