クラファン3分で2800万円集めた”マスク型翻訳機” 「今は売上につながらなくてもいい」と社長が話すワケ:「ニューヨーク・タイムズ」も注目(2/3 ページ)
従業員3人のスタートアップが開発したマスク型翻訳機「C-FACE」がコロナ禍で大きな注目を集めた。36カ国約150社から問い合わせがあり、『ニューヨーク・タイムズ』でも紹介された。しかし、ハードウェア認証や日本という国柄の問題でそこまで大きな売り上げにつながっていないのが現状だという。社長は「今はそれでもいい」と話す。その理由とは?
反響はあったが、売り上げにつながらない…… なぜ?
C-FACEの反響を「想像以上」と小野氏は振り返る。フジテレビ『Live News α』で取り上げられたことで一気に話題となり、投資家向けクラウドファンディング「FUNDINNO」ではわずか3分49秒で上限金額の2800万円を集めた。その後、上場企業から数億円の資金調達に成功している。
「人類が国際交流を広げようとする中、コロナ禍はそれが止まる未曾有の危機でした。それに対し、テクノロジーを使って感染対策と意思疎通が両立できることに希望を持つ人は多かったのだと思います。また、そんな商品を作ったのが福岡の田舎発のたった3人のスタートアップだったことも、話題になった要因の一つでしょうね」(小野氏)
世界中のメディアから取材を受け、36カ国約150社から問い合わせがきているものの、ハードウェア認証の兼ね合いで国外への販売はまだできていない。
日本でも商品購入型クラウドファンディング「Makuake」の反響は、投資家向けと比べて低かった。話題にはなるものの、半鎖国状態の日本で翻訳機が必要な場面は少なく、販売個数は6000枚ほど。大きな売り上げにはつながっていないのが現状だという。
今後の販売戦略を尋ねたところ、小野氏からは「翻訳市場でシェアを取ろうとしているわけではない」という意外な答えが返ってきた。
「C-FACEのおかげで会社のステージは確実に上がりました。世界的なニュースになったことでプレゼンスは高まり、今後の動きにも注目してもらいやすくなったと感じます」(小野氏)
会社のプレゼンスを高めた先に目指すのは、「2050年、意識を持った人型ロボットで世界を変える」未来だ。
人型ロボットの構想は、政府が掲げる「ムーンショット目標」にも重なるという。ムーンショット目標とは「50年までに人が身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会の実現を目指すもの」。近年、世界の人口が急激に増え、環境破壊や食料危機が深刻化しているのは周知の通り。地球の存続が危ぶまれる中、「ロボットの体で生きる未来もあり得る」と小野氏は考える。
「いくら意識があるとはいえ、ロボットの体で生き続けるなんて想像できない。人類が全員ロボットとして生活するなんてディストピアだ……」と思う人もいるだろう。
関連記事
- ランドセルが、約90%軽くなる「棒」とは? 購入予約数は約2000本に
ランドセルの重量化が腰痛や肩こりなどを引き起こす「ランドセル症候群」が小学生の間で広がっているという。そんな状況を改善すべく、大学生と小学生が協力して、ランドセルを約90%軽くする「棒」を開発した。棒でどうやってランドセルが軽くなるのかというと…… - ”おじさん上層部”の反対を押し切って発売 約2年で44万個売れた「プリントグラス」のヒットの理由とは?
創業200年の老舗ガラスメーカーが復刻させた、昭和レトロなデザインのプリントグラスが爆発的に売れている。累計販売数は2019年10月の発売から約2年で44万個を突破した。昨年の1月からは7カ月連続で月次の最高販売数を更新しているという。なぜ今、復刻商品が売れているのか? その秘密に迫る。 - 値下げ品がスーパーから消える? 消費期限を延ばす”魔法のパック”とは
三井・ダウ ポリケミカルが生鮮食品などの消費期限を延ばす”魔法のパック”を開発している。肉の消費期限は3日から13日に、魚は2日から7日に延ばせるという。夢みたいな話だが、品質に問題はないのか? どういう製品なのかというと…… - コメダの新業態店「KOMEDA is □」の料理に覚えた”違和感” プラントベースの限界か
東京・東銀座駅から徒歩2分の場所にコメダの新業態店舗「KOMEDA is □」がオープンした。「地球とくつろぐ」を目指し、プラントベース100%のメニューを提供している。人気メニューを口にして言い表せない”違和感”を覚えた。コメダが考える現時点のプラントベースの”限界”とは? - 丸井が吉祥寺でシェアハウスをオープンした「納得」の理由
丸井グループは2021年3月に吉祥寺駅から徒歩2分の立地にシェアハウスをオープンした。Z世代をターゲットとしているという。狙いは、コロナ禍で落ち込む百貨店事業再生か? 百貨店事業と畑違いのシェアハウス事業を手掛けるワケを聞いた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.