クラファン3分で2800万円集めた”マスク型翻訳機” 「今は売上につながらなくてもいい」と社長が話すワケ:「ニューヨーク・タイムズ」も注目(3/3 ページ)
従業員3人のスタートアップが開発したマスク型翻訳機「C-FACE」がコロナ禍で大きな注目を集めた。36カ国約150社から問い合わせがあり、『ニューヨーク・タイムズ』でも紹介された。しかし、ハードウェア認証や日本という国柄の問題でそこまで大きな売り上げにつながっていないのが現状だという。社長は「今はそれでもいい」と話す。その理由とは?
スマートマスクは「未来」をつくる1要素
「50年にはデバイスに意識をアップロードし、脳波でコントロールする時代が来ると思います。デバイスの中に入れた意識で、現実世界のロボットを動かすこともできるはず。そんな世界に最適なロボットを作りたいです。
最終的には、肉体がいらなくなるかもしれません。そうなれば食料問題は解決され、環境への負荷も軽減できる。どこかに行くときは現地のロボットに意識を転送し、ロボットを通じて動き、ロボットを通じて五感を感じられれば移動も必要なくなります。地球にとっては良い未来かもしれませんね」(小野氏)
それが人間にとっての幸せなのか、倫理的にどうなのか――。そういった問題はさておき、人類存続の一つの道として、小野氏はそんな未来を描く。
では、その未来とC-FACEはどうつながるのか。一見、全く関係がないことのように思えるが、小野氏は次のように話す。
「僕らの軸は2つあります。一つはロボットを作ること。もう一つは、スマートマスクなどのプロダクト開発。後者を通じて、ロボット開発に必要な技術やデータを得たいと思っています」
アフターコロナを見越して、4月から「Makuake」で新製品のイヤホン型翻訳機を発売する予定だという。こうした製品で言語や聴覚を、将来的にはスマートメガネなど別のプロダクトを通じてその他の五感や身体情報を収集し、ロボット開発に生かす考えだ。
そして、もう一つの軸であるロボット開発で進めているのが、コピーロボット開発だ。AIに自身の膨大なデータを入れることで、自分と同じ人格を持つロボットを作ろうとしている。
「志向性や考え方、座右の銘などあらゆるデータをAIに入れ、話しているときの表情をディスプレイに映し、本人の声も再現する。まさに自分のコピーです。最終的には100年後にもその人の人格が残るようなロボットを作りたいと思っています」(小野氏)
ゆくゆくは体をロボットにして、肉体的な死後も意識を残し続けることができるようになるかもしれない。そうなれば、人間にとって最も恐ろしい「死の恐怖」も軽減できるかもしれないという。
現状、一般ユーザー向けロボットは「あったらいいもの」だ。だが、仮に死後も自分の意識を残し続けられるとしたら、「コピーロボットはマストハブになり得る」(小野氏)。
小野氏の構想を「完全に的外れ」と言い切ることはできないかもしれない。実際に映像コンテンツの世界では、似たような設定の作品も存在する。20年にアマゾンプライムが配信を開始した「アップロード 〜デジタルなあの世へようこそ〜」は、死後、自分の意識を仮想現実にアップロードするサービスが実装された未来を描いている。
「もし死ぬとき、意識をロボットにアップロードできるとしたら。少なくとも僕は、それを選ぶ気がします。意識がそのまま残って、手足を動かすようにロボットを動かせるのであれば、今の状態とあまり変わらない気がするんですよね。自分が想像する未来がどうなるのか、とても興味があります」(小野氏)
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