民間企業も他人事ではない 大不調の日ハム・阪神から学ぶ「トップ人事」の重要性:東芝・みずほFGでも不可解なトップ人事が(3/3 ページ)
BIGBOSSの監督就任で鳴り物入りのシーズンインも、不調の日ハム。セリーグで不調の阪神と合わせ、「トップ人事」が大きく影響していると筆者は指摘する。同様のリスクは、民間企業にもあるようで……。
確かに委員会設置会社における社外取締役を中心とした指名委員会による役員人事の決定は、旧来トップ全権での後継や役員指名が当たり前となっていた日本企業のガバナンス強化には、それなりの役割を果たしてきたとはいえるでしょう。
しかし経営が抱えている、表向きからは見えにくい経営課題や候補者の詳細な人物像などに関して、社外取締役の理解には限界があるのも事実です。一般の役員人事ならまだしも、トップ人事を社外取締役だけで決めることは企業マネジメント上で大きなリスクを抱えることになるのではないかと、東芝やみずほの件から懸念を大きくするところです。
社長を中心として社内の人間が原案を提示し、社外取締役が戦略方針や喫緊の経営課題に照らしその正当性を吟味する――というのが戦略とガバナンスのバランス上の限界であり、社外取締役に一任することはガバナンスを強化しつつも経営を危うくするリスクをはらんでいるのではないでしょうか。その上で、そのトップ人事決定に至った議論を開示するのが、ステークホルダーや投資家に対する今様の在り方なのではないかと思うのです。
高度成長期のような右肩上がりな経済を背景にした、誰が経営のかじ取りをしても大きな失敗にはつながらなかった時代とは異なり、さまざまな問題が複雑に絡み合った現代は、経営者の人選そのものが戦略であるとの理解をもって、企業もマスメディアもトップ人事を事細かに開示、報道する姿勢に努めて欲しいと思っています。昨年来東証の求めによって上場企業が取締役のスキル開示に動き出している今、新トップ就任に際してのご祝儀的な人物紹介記事などもういらないと、声を大にして申し上げたいところです。
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