日立と東芝、ソニーとパナ 三度のパラダイムシフトが分けた「昭和企業」の明暗:どこで差がついたのか(1/4 ページ)
バブル崩壊、リーマンショック、コロナ禍と、平成以降、日本企業を襲った三度のパラダイムシフト。この間に、多くの「昭和企業」が明暗を分かたれた。本記事では、代表的昭和企業として、日立と東芝、ソニーとパナソニックを分析していく。
コロナ禍も1年半が経過して、産業界はこれが一つのパラダイムシフトになったと、確実に実感させられています。歴史を振り返れば、こうした大きな変革は平成以降10年前後の周期でやってきています。そして、高度成長期に大きく花開いたわが国を代表する昭和企業たちは、その都度生き残りをかけて時代の急変革にのまれまいとさまざまな努力をしつつ、何とかここまで生き延びてきたといえるでしょう。
しかし、さすがに平成以降三度目にあたる今回の大変革では、優勝劣敗が明らかに現れたことが見てとれます。その優劣要因はどこにあったのか。また「負け組」昭和企業は生き残りに向けて何が必要なのか、検証していきます。
日本企業が直面した三度のパラダイムシフト
まず昭和の終焉(しゅうえん)以降約10年ごとの経済的変革を押さえておきます。
昭和の終焉を受けた平成元(1989)年は、くしくも土地神話に踊らされたバブル経済がピークを迎えた時期でした。しかしバブルは程なくはじけ、10年後の99年には前年の長銀、日債銀の破綻を契機として、わが国は未曽有の金融危機に陥り経済は大きく落ち込みます。銀行のみならず実業界は大再編時代を迎えました。さらに10年後の2009年は前年のリーマンショックを受け、日本経済が再び大低迷へと陥ります。そして10年後の20年は、突如襲ったコロナ禍経済が、平成以降に三度目となる大きなパラダイムシフトをもたらしたわけなのです。
99年のパラダイムシフトでは、戦後の長き高度成長からバブル経済に至る過程を作り上げた昭和企業たちにある種の反省を促し、高度成長期にあまり注目をされてこなかったコスト削減への取り組みや年功序列的な人事制度の見直しなどによる収益重視、成果主義などが明確に打ち出されるなどの変革を生みました。
しかしながら日産自動車のように「青い目の経営者」によって想定を超えた変革を断行された例を除き、まだ多くの昭和企業は「嵐が去れば」的な感覚でいたことも事実であり、10年後の次なるパラダイムシフトであるリーマンショックが、彼らに本気の改革を迫ることになるわけです。
すなわち彼らが「もはや昭和のやり方では生き残れない」という危機感をもって、リーマンショック以降の10年を過ごしてきたのか否かということが、三度目のパラダイムシフトであるコロナ禍における企業評価の違いに大きな差が表れたといえます。
その格好の検証事例として、電機業界を見てみましょう。戦後の高度成長を支えてきた昭和由来の大企業たちが「昔の名前」で覇権を争っている同業界では、明確に「差」が表れています。具体的には、長年ライバル関係にある日立と東芝、ソニーとパナソニックのこの10年に、対照的な流れを見ることができるのです。
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