「上場時に、うちの株を全部売ってほしい」──“IPO革命”は、なぜ実現できた? ラクスル永見CFOに聞く:対談企画「CFOの意思」(2/4 ページ)
ラクスル上場前にベンチャーキャピタル(VC)に株を売却してもらう、上場に海外投資家も巻き込む──などの革命的な手法は、どのようにして編み出したのか? ラクスル永見CFOとグロース・キャピタル嶺井CEOの対談の模様をお届けする。
永見氏: 「上場のときにベンチャーキャピタルは全株売ってくれない」というのも常識でしたが、自分としては必ずしもそうではないと思ったし、経済合理性のある条件を作ればこのサイクルで回せると思っていました。実際にどうやって実現するのかは、GMOペイメントゲートウェイの村松さんやミクシィのCFOだった荻野さん、アイスタイルのCFO菅原さん、それからカーライルの先輩……と、いろいろな人からアドバイスをもらいました。
嶺井氏: 当時、VCがこの規模を売ってくれるなんてありえなかったと思うんです。「初値の方が高い」「上場後の方が高い」と当たり前に言われていたときに、どうやって説得したんでしょうか。
VCと契約を交わして売らないといけないようにした、というわけではなかったんですよね? 自分も上場経験がありますが、どんなコミュニケーションを取ってもまずもって売ってもらえません。
永見氏: はい、契約は交わしていません。
オファリングサイズは、上場時の売り出しと調達のサイズが50億円を超えると基本的には初値が上がりません。であれば、上場後に売るのと今売るので変わらないから、上場時にまとめて売却した方が流動性の観点で良いですよと、データと共に説明しました。「僕たちは絶対にオファリングサイズを50億円以上にするので、初値は上がりません」と言って、VCに売却してもらいました。結果的に上がっちゃったんで、VCの人にはごめんなさいと言ったんですけど(笑)。
嶺井氏: 納得して売ってもらうまでのロジックを作り上げ、コミュニケーションを取ったからこそ、その後の適切な株主構成につながったわけですね。
年収は4分の1、未経験業務の山──壁を乗り越えて「経営者」になった
永見氏がラクスルに入社したのは、同社が上場した19年8月から遡ること5年前。14年4月のことだった。
それまでのキャリアの概要を追っておこう。04年に慶應義塾大学総合政策学部を卒業して新卒入社したのはみずほ証券。M&Aのアドバイザリー業務の経験を積み、06年には当時の最年少でカーライル・グループに転職した。米国ペンシルベニア大学ウォートン校への2年間のMBA留学を挟んで13年まで在籍。買収後にもワンストップで投資や経営に関われることにやりがいを感じていたという。13年にはDeNAに転職するも、8カ月で離職。その後はラクスルにCFOとしてジョインした。
嶺井氏: ラクスル入社時に松本社長からは、どういう期待値を持たれていたんですか?
永見氏: 当初の期待は、まずは資金調達でした。未上場だったのでベンチャーキャピタル(VC)などでの資金調達をして、将来の成長を作っていく人として入社しました。具体的には経営企画的な事業の予算策定や計数管理、取締役会の運営も期待されていましたね。もう少し抽象的な役割としては、経営のディスカッションを一緒にできる仲間が欲しかったのだと思います。
ただ僕の入社時には組織の離職率は当時40%を超えていて、組織として壊れかけの状況だったので、最初の3カ月はひたすら採用しかしていませんでした。
嶺井氏: そこまで採用のご経験はないですよね。課題があるから手探りでもやらなきゃいけない、という状況だったのでしょうか?
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