ロコ・ソラーレ本橋麻里代表に聞く「ゼロから強い組織を作る方法」:日本カーリング界の歴史を変えた(1/5 ページ)
北京冬季五輪のカーリングで銀メダルを獲得したロコ・ソラーレ。本橋麻里代表理事が、ITmedia ビジネスオンラインの単独インタビューに応じた。「起業家中の起業家」と表現しても大げさではない本橋代表に、ゼロから強い組織を作る方法を聞く。
北京冬季五輪のカーリングで銀メダルを獲得したロコ・ソラーレ。世界各国がマークしてくる中で、前回の平昌・冬季五輪で獲得した銅メダル以上の成績を残したことはチーム力の向上を感じさせた。まさに日本カーリング界を変えたチームであり、その姿はメディアを通して人々に希望を与えた。
そのロコ・ソラーレを創設した本橋麻里代表理事(以下、敬称略)が、ITmedia ビジネスオンラインの単独インタビューに応じた。
本橋はかつて所属していたチーム青森から故郷の北海道・北見に戻り、ロコ・ソラーレをゼロから立ち上げた(当時はLS北見)。しかもカーリングチームを一般社団法人化させたことは、本橋氏によれば世界でも類を見ないという。
その点で本橋の功績は計り知れない。何もないところに礎を作り五輪の舞台で銀メダルを獲得するチームを作った本橋は、ある意味で「起業家中の起業家」と表現しても大げさではないだろう。
スポーツ庁は「スポーツオープンイノベーション推進事業(地域版SOIP)」を進めており、2月には「Innovation League Sports Business Build」というイベントを開催。そのトークセッションに本橋が登壇した。
本橋麻里(もとはし・まり) 一般社団法人ロコ・ソラーレ代表理事。12歳の時にカーリングを始める。2006年に「チーム青森」のメンバーとしてトリノ五輪に初出場し、7位となって注目を浴びる。2010年のバンクーバー五輪でも8位となり、2大会連続入賞を果たす。同年8月、出身地の北見市で新チーム「ロコ・ソラーレ」を結成。16年3月の世界選手権で銀メダルを獲得するなど、チームとして成長していく。18年2月の平昌オリンピックでは、日本カーリング史上初の表彰台である銅メダルを獲得し、脚光を浴びた。18年夏に選手休養を表明し、一般社団法人ロコ・ソラーレを設立。代表理事としてチーム運営、育成チーム「ロコ・ステラ」の選手兼コーチなど、チームを支える活動をしている。ロコ・ソラーレは22年2月の北京オリンピックで銀メダルを獲得。北海道常呂郡常呂町(現・北見市)生まれ。日本体育大学卒業(以下クレジットのない写真はロコ・ソラーレ提供)
恩師から教わったこと
「周りが笑顔になっているのが私には一番うれしいことです。私はそれをみてニヤニヤしています(笑)」
北京五輪で銀メダルを取った感想を聞くと、いきなり彼女らしさ全開のコメントが返ってきた。本橋は世界中の人がロコ・ソラーレのメダル獲得を喜んでくれているのを実感しているという。
「新型コロナウイルスなど暗いニュースが続いていましたが、海外の方や日本のナショナルコーチ(カナダ人のJDリンド)のお母さんにも喜んでもらえたようです。まるでチームメンバーが増えたみたいです」
本橋はかつて所属していたチーム青森から故郷の北見に戻り、ゼロからロコ・ソラーレを立ち上げた。筆者は、北海道の常呂町(現・北見市)から車ですぐの網走市に住んだ経験があり、カーリングが盛んだった常呂町が北見市と合併する前から良く知っている。
地元で起業して飲食や小売など何らかのビジネスをするのは大変ではあるものの、ビジネスとして成り立つのは想像できる。しかし、スポーツチームを結成し、スポンサーを集め、ましてや中小企業が中心の地元企業から資金を得て活動するとなると、その苦労は生半可なものではない。
そうコメントすると本橋は「最初は何もなかったので……」と笑う。
「逆に何かがもともとあったらできなかったと思います。競技の特性と私の性格から、暗闇の中にも光はあると思い、活動してきました。確かに難しいことはたくさんありました。ですがカーリングを始めるきっかけになった恩師が、『青森で修行しておいで』と私の背中を押してくれました。恩師から教わってきたことと、『これは間違っていない』という信念が私にはあります。
2人の恩師が亡くなってしまい、カーリングの普及に一番貢献した人が(メダルを獲得した姿を)見られないんだなという悔しさもありながら活動していますので、ハッピーでいる瞬間は2割くらい、残りの8割は『これをしなきゃ』『これを忘れてはいけないな』という方が多いのです」
本橋は銀メダルに浮かれることなく未来を見据えている。恩師から何を一番学んだのか。
「私を選手としてだけではなく、1人の人間として向き合ってきてくれたコーチでした。たくさんの愛情をもらいました。次の子たちには同じことをすればいいんだと思ってやっています。15歳ぐらいのときから『地域のために役立つことをやりなさい。お前にはやるべきことがある!』と言われながら育ってきました。
最初は何を言っているのか分からなかったのですが、その後、人生を歩んできた中で、地域のために活動してきた恩師だったので、その意味が今になって分かる、リンクする感覚です」
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