「ららぽーと福岡」オープンの衝撃 ショッピングセンター飽和の時代、勝算は?:勝ち組の研究(5/5 ページ)
2022年4月、ショッピングセンター(SC)業界の雄「ららぽーと」が福岡に出店した。SCは飽和しているといわれている。どこに商機を見い出しているのか、現地で分かったこととは?
(3)物販とサービスのバランスが変化し始めている
ららぽーと福岡を従来の日本のSCと比較すると、その業種構成に変化が見られます。
実は、ららぽーと福岡は従来のSCと比較して、物販よりもサービスに比重をおいたテナント構成にしているのです。従来は物販:サービスの構成は6:4程度だったのですが、ららぽーとは5.5:4.5と半々に近づいてます。特に飲食テナントの構成を上げています。すでにSCは物売りで成り立つものではなく、コト売りを重視しないといけない流れになってきているのです。
ここに、消費者の嗜好の変化が読み取れます。モノからコトへという流れはSCのテナント構成を変え始めているのです。
また、同SCは顧客の変化だけでなく、従業員目線でも作られています。
施設やテナントで働く従業員用休憩スペースが、これまでのどのSCよりもきれいで充実しています。換気は行き届き、個別のブースまで備え付けられていて、ゆっくりと一人で休憩することができます。パウダールームや歯磨きスペースも設置。ここで働く従業員にとって、働きがいを感じられるようなバックヤードになっているのは、これからの商業施設では大変重要であると感じました。
博多商圏を見れば日本の流通業の未来が見える
ららぽーと福岡は博多駅から車で10分程度、JRでも1駅という好立地にあります。近隣に郊外型SCはありませんが、博多駅周辺の駅ビル、商業施設とは競合することになります。また、天神や大名という路面専門店の集合体とも商圏は重なってきます。
消費者目線でいえば、博多は「利便性」、天神・大名は「嗜好性・専門性」、そしてららぽーと福岡は「エンターテインメント性・レジャー性」が集客要因です。
ららぽーと福岡はさまざまな体験を売りにした店舗構成を強化することで、来店客にゆったりした時間を過ごしてもらうことを狙いにしています。
消費者に新しい体験を提案することで、従来の「モノだけ」を販売する施設から「コトも提案する」SCとして認知してもらい、何度も通いたくなる施設づくりを目指しているのです。これが認知されれば、既存の博多駅周辺店舗、天神・大名地区店舗ともうまく共生していけるでしょう。SC飽和の時代の商業施設の在り方を考える上で、この博多商圏は大変参考になると思います。
競争するのではなく、いかに共生していくか。
持続性のある街づくりのためには商業施設はどうあるべきかを真剣に考える時代がきています。ただ店を作ればいい時代は完全に終わりました。全国でも屈指の商業激戦区となった博多。商業者にとって、未来の店づくりのためにも目を離せないエリアといえそうです。
著者プロフィール
岩崎 剛幸(いわさき たけゆき)
ムガマエ株式会社 代表取締役社長/経営コンサルタント
1969年、静岡市生まれ。船井総合研究所にて28年間、上席コンサルタントとして従事したのち、同社創業。流通小売・サービス業界のコンサルティングのスペシャリスト。「面白い会社をつくる」をコンセプトに各業界でNo.1の成長率を誇る新業態店や専門店を数多く輩出させている。街歩きと店舗視察による消費トレンド分析と予測に定評があり、最近ではテレビ、ラジオ、新聞、雑誌でのコメンテーターとしての出演も数多い。
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