「日清の“謎肉”がなくなれば、日本の生命線が守られる」は本当か:スピン経済の歩き方(6/6 ページ)
日清食品ホールディングスと東京大学は、日本で初めて「食べられる培養肉」の作製に成功した。この報道を受けて、筆者の窪田氏は「日本の生命線が守られるかも」と指摘しているが、どういう意味なのか。
国民を守るためには何が必要なのか
日本は食料自給率が低い国なのだから、培養肉に活用できる技術があるのならば、国が音頭をとってそれらを集結させて、「日の丸培養肉」の開発を目指していかなければいけない。しかし、この国では「国防」というとバカのひとつ覚えのように、敵基地攻撃能力だ、核の抑止力だと繰り返すだけで、本当に国民を守るためには何が必要なのかというところまで議論がいかない。
先の戦争で亡くなった日本軍兵士の6割は餓死だったという調査もある。石油がないので、松ヤニで飛行機を飛ばそうとしていた。では、そんな絶望的なエネルギー・食料不足に陥る前、日本は何をやっていたのかというと、「米国との軍事力の差をひっくり返せば戦争に勝てる」とせっせと世界最大の戦艦大和をつくっていた。
「食料とエネルギーをいかに自給自足するか」という戦争の本質の前に、そんなものはほぼ役にも立たない。あっという間に撃沈されて海の藻屑となった。
よく日本は「平和ボケ」というが、「戦争のやり方を知らない」という表現のほうが正しい。悲惨な歴史を繰り返さないためにも、日本政府は1日も早く、日清と東大が進めている「国産培養肉」の開発を国策にすべきだ。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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