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マツダの世界戦略車 CX-60全方位分析(3)池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/4 ページ)

いったいマツダは新たなFRシャシーで何をしようとしたのだろうか? 存在を感じない道具を作るのはそれはそれでもの凄く大変なことで、それこそ値千金なのは理屈としてよく分かる。正しいのか正しくないのかといえば正しい。間違い無く正しいのだが、大衆に理解されるかは何ともいえない。

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ダブルウィッシュボーン式のサスペンションの効果

 さて次は乗り心地の話だ。「サスペンションの設計技術」の図である。従来のストラット型フロントサスペンションでは、サスペンションストローク時に前後の車軸位置が描く軌跡の傾きが揃っていなかった。それはストラットの限界を示すもので、具体的に述べれば、アンチノーズダイブジオメトリーを取りたければ、車軸が後ろへ動くモーションがタイヤを沈める方向の力を助長する後ろ倒れの軌跡には仕立てられなかった。

 ブレーキング時につんのめる姿勢を起こさないためには、どうしても前倒れの軌跡に仕立てなければならない。対してリヤをアンチスクォート、あるいはアンチリフトに持っていこうとすれば、当然前とは逆に後ろ倒れの軌跡を持たせることになる。

 さて、この前後で傾き方向の異なる軌跡の垂線同士(本当は弧を描くのでもう少し複雑)が公差するポイントを考えると、車軸の内側しかあり得ない。そこがピッチングセンターになる。対してラージでは、縦置きでゆとりのできたフロントサスペンションスペースのお陰で、アーム長がたっぷり取れるので、ダブルウィッシュボーン式のサスペンションの採用が可能になった。

 ストラットでは上側のダンパー取り付け点がすなわち車軸の軌跡の傾きを決めるのに対して、ダブルウィッシュボーンでは、上下アームとダンパーの関係は自由である。なんならリンクを介して水平にだって置けるし、そもそもアームの支点は仮想軸であることが多い。結果として、ピッチングセンターをホイールベースの間から追い出すことができた。

 するとどうなるか。従来ならシーソーのように、タイヤの入力に対してギッタンバッコンと動いていたボディは、ボディ後方のピッチングセンターを軸にした上下運動になる。上下運動にさえしてしまえば、サスペンションの得意なモーションなので制御が圧倒的にし易くなる。しかも動きが単純化された結果、ドライバーにとっても動きが予想しやすい。

 さて、これからKPCの説明をしなくてはならないのだが、その後で総論まで書くことを考えると大変な長さになる。申し訳ないが少し楽をさせていただく。以前書いた「ーロードスター990S 7年越しの回答」の5ページ目からの記事に詳細は書いてあるので申し訳ないがリンクで先を読んでいただきたい。

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