マツダの世界戦略車 CX-60全方位分析(1):池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/4 ページ)
前回の予告通り、今回からはCX-60の詳細な解説に入っていく。まずはマツダはなぜラージプラットフォームを開発したのか。その狙いはどこにあるのかが最初のテーマである。
さて、前回の予告通り、今回からはCX-60の詳細な解説に入っていく。できれば3回くらいでまとめて、本日から3日連続の掲載が一応の心づもりなのだけれど、そんなに計画通りに進むかはやってみないと分からない。
まずはマツダはなぜラージプラットフォームを開発したのか。その狙いはどこにあるのかが最初のテーマである。
マツダにとって最重要の北米マーケット
最初に指摘しておかなくてはならないのは、マツダは「北米マーケットを信頼している」ということだ。2019年11月28日に掲載した藤原副社長へのインタビュー『為替は「北米に工場を造っても、ほとんど変わらない」 マツダ藤原副社長インタビュー(2)』からその部分を抜き出そう。
藤原 あのアメリカっていう国は、例えばリーマンショックみたいなのがどーんときたとしても、2年後には必ず戻りますよ。ものすごい懐が深いです。だからアメリカが一時的にどうなろうと、北米でビジネスを成功させない限りダメだっていうのが、私たちの思っていることです。もちろん短期的にはどうなるかわかりませんけど。
この発言から見えるのは、旧3極の重要マーケット、北米、欧州、日本に、新興マーケットである中国を加えた4極の中で、マツダは北米を別格だと受け止めていることだ。
背景にあるのは、それぞれのマーケットの先行きだ。いうまでもなく、少子化が課題となっている日本に今後の伸び代は期待できない。ウクライナとロシアの影響も、部品や原材料供給、あるいは販売マーケットとして、両国を域内経済に組み込んできた欧州にとっては大きな打撃になるだろう。そもそも欧州はウクライナ以前から、何とかして日本車の進出を阻もうと、さまざまな策略を巡らせてきており、いつ何時はしごを外されるか分からないという意味で、元々要注意マーケットと捉えてきた日本メーカーは多い。
では、世界最大の市場である中国はどうかといえば、米国を中心にロシアより前からデカップリング(切り離し)が進められてきた中国マーケットが、果たして今後世界経済の中でどう扱われるかもまた不透明だ。さらに、長らく「中国バブルは弾ける」といわれてきている。それがいつかは誰も明言できないまでも、いつかは大きなマイナス局面が訪れるであろうことは想像に難くない。長期的には一人っ子政策の影響で、日本以上の少子高齢化はもう避けられない。
人的にも資金的にもリソースに制約があるマツダが、それらの内、どこか1カ所を選択的に攻略するとすれば北米をおいてないというのが、マツダのマーケットの捉え方である。
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